2018年02月08日

「What is 和食 WASHOKU?」

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服部 幸應/服部 津貴子 監修
こどもくらぶ 編
ミネルヴァ書房 出版

 出張で来日した外国の同僚と食事に行くときなど、日本食について説明することができれば、おそらく喜んでもらえると思っても、わたしには難しくてできません。それで、この本に惹かれ、読んでみました。この本では、日常的な和食だけでなく、地方色豊かな名物料理やハレの日の料理も、薀蓄とともに紹介されていて、英訳も添えられています。(しかも日本語学習者も日本語で読めるよう、すべての漢字にルビがふられています。)

 読んでわかったのは、日本食を外国の方々に説明できずにきた理由は、知らないことが多過ぎたということです。

 知らずにいたことのひとつは、英語の語彙を使うコツがわかっていなかったことです。たとえば、きのこ。この本では、mushroomと訳されていて、しめじ、干しいたけ、えのきといった違いを説明する必要があるときは、それぞれ、shimeji mushroom、dried shiitake mushroom、enoki mushroomとされています。しめじを shimeji と呼べば、shimeji の説明が必要になりますが、shimeji mushroom とすれば、誰でもわかります。見れば納得のテクニックなのですが、考えつきませんでした。

 ほかにも、これまでウン十年ものあいだ接してきた懐石料理が、もともとは茶の湯の席に招いたお客さまに、お茶を飲む前に食べていただく質素な料理のことだったとは、知りませんでした。おなかをすかせたままではお茶をおいしく味わえないため、お茶を飲むのにさしつかえのない程度の食事を準備していたとか。この『懐石』は、禅宗のお坊さんが、懐にあたためた石を入れて、空腹や寒さをしのいだことからきたことばだそうです。こういった背景は、漢字を見ておおよその見当のつく中国系の人たちに説明すると楽しんでいただけそうです。

 これからは、外国の方々と食事に行く前にこの本を引っ張りだして、予習していきたいと思います。
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2018年01月25日

「幸福な生活」

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百田 尚樹 著
祥伝社 出版

 短篇が19篇収められていますが、例外なくどれも、あるルールに従っています。それは、最後の1行で、意外な結末がもたらされることです。そのルールをを知らずに読み始めたのですが、3篇か4篇読んだところで気づき、その途端、意外であるべき結末がある程度予測可能な結末になってしまいました。

 予測可能な理由は、結末に至るまでの説明にあるのだと思います。結末が意外に感じられるようにするために、結末と反対の印象を与えるべく、くどいといっていいほどの説明が加えられています。心情を描写するでもなく、それを裏づけるしぐさや表情を追うでもなく、結末の1行とそれまでのあいだに落差を作るための説明が続くと、結末を想像するのは、そう難しいことではなくなるようです。

 小説で、くどくどと説明されると、場面を思い描いたり、心のうちを察したり、そういう余地がなくなってしまい、あまり楽しめなくなってしまうものだと思いました。
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2018年01月13日

「一生疲れない人の「脳」の休め方」

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菅原 道仁 著
実務教育出版 出版

 キャッチーなタイトルですが、脳の休め方に限った内容ではなく、生活の向上を幅広く扱っています。著者が脳神経外科なので、研究結果などの根拠があり、その点が高く評価できます。

 1.考えたこともなく驚いたこと、2.言われてみれば思いあたること、3.やはりそうだったのかと納得できたことがありましたが、それぞれ印象に残っているのは、以下です。

1. 考えたこともなく驚いたこと

 座りっぱなしの生活は、寿命に大きな影響を与えるそうです。シドニー大学のエイドリアン・バウマン教授らによる調査では、1日あたり合計11時間以上座っている人は、どれだけ運動をしていても、3年以内に死亡するリスクがそうでない人より40%高いと判明したそうです。また1日に合計して8〜11時間座っている人は、座る時間が4時間以下の人に比べ、死亡するリスクが15%も高いそうです。

2. 言われてみれば思いあたること

 ロンドン大学の精神医学学科チームは、「Eメールや電話によって気を散らされたときにビジネスパーソンのIQは低下し、徹夜明けの数値とほぼ同等になる」と発表しています。別の研究ではマルチタスクの切り替えによって、生産性が40%も下がるとした報告もあるそうです。
 ひとつのことしか集中できないと割り切って、メールや電話に割く時間をまとめるのが効率的なのでしょう。

3. やはりそうだったのかと納得できたこと

 ストレスを感じている友人や家族、同僚に会うと、自分まで瞬時に影響を受けてしまうことがあり、ある研究によると、ストレスを感じている人を見ただけで、被験者の26%がコルチゾール(ストレスホルモン)のレベルが高まったそうです。こういった「セカンドハンド・ストレス(周囲から受けるストレス)」は、知らない相手より恋人の方がより感染力が高いことがわかっていて40%の人が恋人の状況に影響を受け、見知らぬ他人のストレスに影響を受けた人も24%存在していたそうです。
 ストレスと上手に付き合うようにするとともに、それができていない人には極力近づかないほうが良さそうです。
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2018年01月05日

「老人犯罪団の逆襲」

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カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ (Catharina Ingelman-Sundberg) 著
木村 由利子 訳
東京創元社 出版

犯罪は老人のたしなみ」の続編です。タイトルにある老人犯罪団は、5人で合計400歳という年齢を武器に、認知症のフリをしてピンチを切り抜けるという最終手段に訴えることもありますが、周到に計画を立てたり、リハーサルを繰り返したり、犯罪のたびに手口を変えたりといったプロフェッショナルな面も併せ持つユーモラスな集団です。

 そうはいっても、にわか犯罪団なので詰めが甘く、手に入れた金銭や高額品をいともあっさり紛失してしまうというドタバタだらけで、それが読みどころのひとつになっています。前作同様今作でも、失くしたものが巡り巡って目の前にあらわれる場面がいくつかあるのですが、80歳の現役窃盗犯たちよりも、非現実的な設定になっています。

 そんな笑えるほど非現実的な設定があっても、とりあえず楽しく読めてしまうのは、80歳前後のお年寄りが寝たきりになってしまうのではなく、目標をもって元気に窃盗に励み、社会貢献を果たし、5人の共同生活を楽しむという明るさの為せるワザです。こと老後に関しては、暗いニュースが多い世の中にあって、こういうストーリーは、多少のことは目をつぶる気になれてしまいます。
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2017年12月21日

「犯罪は老人のたしなみ」

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カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ (Catharina Ingelman-Sundberg) 著
木村 由利子 訳
東京創元社 出版

老人たちの生活と推理」や「氷の女王が死んだ」と同じように老人ホームに住むお年寄りたちが主人公なのですが、受ける印象は、かなり違っています。

「老人たちの生活と推理」で始まるシリーズの老人ホームは、アメリカのサンディエゴ近郊にあり、この作品のほうは、スウェーデンのソーデル(ストックホルムから車で半時間ほど)にあるという地理的な違い以上に大きな違いは、「老人たちの生活と推理」が高級老人ホームを舞台としているいっぽう、こちらは庶民的な老人ホームのようです。

 庶民的な老人ホームのようです、などと書くと、自信がないように見えますが、実際に自信はありません。なにしろ、この庶民的な老人ホームの経営者が変わったことをきっかけに、入居者であるお年寄りたちは、自分たちの老人ホームに比べて、刑務所のほうがいい暮らしをできるなどと思い始めるのですが、主人公のメッタは、老人ホームで2DKの部屋に住んでいます。なんとも羨ましい話だと思ってしまうのは、わたしだけでしょうか。

 しかし、スウェーデンの解放刑務所と呼ばれる刑務所の待遇は、たしかに悪くありません。監視付きとはいえ、外出もできます。これはスウェーデンの一般的な話なのか、あくまでもフィクションなのか、気になったくらいです。

 そしてタイトルにあるとおり、お年寄りたちは犯罪に手を染めてしまいます。しかし、なぜか憎めず、犯罪にかかわる前よりずっと元気になったお年寄りたちをつい応援してしまいました。
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2017年12月14日

「ポンド氏の逆説」

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G・K・チェスタトン (G. K. Chesterton) 著
南條 竹則 訳
東京創元社 出版

 ミステリを読むことは、ゲームに参加することに少し似ている気がします。暗黙のルールがある程度あって、そのなかで作家は、謎を作って自ら解いて見せますが、読者はその謎解きに一歩先んじよう、つまりゲームに勝ったかのような気分を味わってみたいと思いながら読んでいるのではないでしょうか。そして解くべき謎の定番は、犯人は誰? 手口は? 動機は? といったあたりでしょうか。

 この短篇集は、それら定番の謎解きではありません。タイトルにある逆説が謎です。逆説というのは『急がば回れ』とか『負けるが勝ち』というものです。初めて聞いたとき誰でも、負けは負けであって勝ちではないと言いたくなるものだと思います。この短篇集のポンド氏は、「何も飲み物がなかったので、みんなすぐ酔っぱらいました」とか「当然のことながら、彼は脚がないので徒歩競争に勝ちました」といったことを、さらりと言ってのけます。そして、謎解きにあたる部分は、逆説の解説です。

 この短篇集には、次の作品が収められていますが、どれにもポンド氏の逆説がある程度含まれています。ただ、逆説にこだわるあまり、リアリティに欠けてしまった「恐ろしき色男」のような作品もあれば、眼の錯覚などを利用した「高すぎる話」のような得心がいく作品もあります。わたしが気に入ったのは、「恋人たちの指輪」です。しかし、ゲームのルールが特殊なので、馴染むことはできませんでした。

ー黙示録の三人の騎者
ーガヘガン大尉の罪
ー博士の意見が一致する時
ーポンドのパンタルーン
ー名前を出せぬ男
ー恋人たちの指輪
ー恐ろしき色男
ー高すぎる話
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2017年12月07日

「あんしん健康ナビ 皮ふと健康 おトク情報」

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花川 博義 著
1万年堂出版 出版

『皮ふと健康』と謳っているので、皮ふのことが詳しく載っているのかと思いましたが、そうではなく、広く浅くアンチエイジングや健康に関することが触れられています。

 そのなかで「それは知らなかった!」と、思うことがいくつかありました。

(1) 布団などに入り込んでいる、アトピー性皮膚炎の原因となるダニは、布団を干しても殺せないので、家庭用布団乾燥機で殺し、死骸を掃除機で吸い取るのが有効だそうです。
(2) 金属アレルギーは、皮膚科のパッチテストで原因がわかるそうです。
(3) 皮膚のシミに有効なレーザーは、Qスイッチのルビーレーザーとアレキサンドライトレーザーで、著者によると、これらの機器を使っていれば、値段に関係なく効果は同じとか。
(4) 美白効果で頭ひとつ抜きんでているのがハイドロキノンという塗り薬だそうです(塗ったとき、1割程度の人に皮膚が赤くなるという副作用があります)。
(5) (4)のほか、肝斑に限っては、トラネキサム酸という成分が入った飲み薬が効果的。

 これを読んだあと、上記をネットで検索したところ、大量に情報が見つかりました。この本で興味をもったことは、ほかの情報源をあたって自分で掘りさげるといいのかもしれません。
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2017年12月05日

「野火」

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大岡 昇平 著
新潮社 出版

 戦争中の食べることもままならない辛さ、思ったことを口に出して言えない辛さ、大切な人を失う辛さ、そういう辛苦辛労を疑似体験するような小説は、いままでにも読んだことがあります。でも、そういった小説を超える凄まじさがこの小説にはありました。

 フィリピンのレイテ島で肺病にかかり、戦力外となった田村一等兵は、病院に収容してもらうことも叶わず、わずかな芋を与えられただけで放りだされてしまいます。

 極限状態に追いこまれて彷徨う田村は、飢え以外に何かを感じることも、ましてや考えることなど到底できない状況で、さまざまなことを考え続けます。その姿は、思考を手放せば、人間であることも手放してしまうかのように見えます。そこまでして考えていると、単なる幻覚や幻聴ではなく、自らの思考をイメージしたような白昼夢のような光景を眼にするようになります。

 田村の思考を読むなかで、人間とは何か、倫理とは何か、生きるとはどういうことか、いろいろ考えさせられました。わたしは、これと同じ極限状態におかれたら、人と人が殺しあう戦争などというものが起こるに任せた自分を呪い、あとは可能なかぎり何も考えずに、ひとりで衰弱に身をまかせいたいと思いました。
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2017年11月10日

「湖の男」

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アーナルデュル・インドリダソン 著
柳沢 由実子 訳
東京創元社

 エーレンデュル捜査官シリーズの「」の次の作品です。このシリーズはいつも、周囲にとっては終わってしまったように見える過去も、本人や身近な人にとっては終わっていないということを突きつけてくるように感じますが、今回も冒頭からそれを感じました。1970年前後に殺され、ロシアの盗聴器という重し付きで湖に沈められた中年男性の白骨が、アイスランドのある湖の水位がさがったことにより発見されるところから始まっているためです。

 その殺人事件と並行して語られるのは、第二次世界大戦後、まだ戦争の爪痕が生々しかったころ、奨学金を得てアイスランドからライプツィヒに留学した青年の学生生活です。青年は、大学で知り合ったハンガリー出身の女性と恋に落ち、幸せな日々を過ごしていましたが、それは共産主義独特の監視社会のなかでのことです。自分の眼を信じ、自分の頭で考え、自らの力で未来を切り開こうと考える人たちにとって幸せな環境ではありません。そうして悲劇が生まれました。

 最後の最後まで、青年の学生生活と殺人事件がどう結びつくのかわからず、なぜロシアの盗聴器という特殊な重しが使われたのか疑問に思いながら、最後まで一気に読んでしまいました。すべての謎が解けたとき、事件を解決する警察小説として上出来だと思うと同時に、「一九八四年」を読んだときに感じた監視社会の恐ろしさを思い出しました。

 わたしたちには忘れられないこともあれば、忘れてはいけないこともあるのだと、あらためて思いました。
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2017年11月06日

「声」

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アーナルデュル・インドリダソン 著
柳沢 由実子 訳
東京創元社

湿地」や「緑衣の女」と同じエーレンデュル捜査官シリーズです。このシリーズはどの作品においても、過去のできごとを掘りさげる点と喪失感が感じられる点が共通点だと思います。この「声」では、とりわけ喪失感を強く感じました。子ども時代に大切なものを失い、それを背負って生きていく過酷さは、おとなのそれとは比べ物になりません。それなのに、次々とそういった子ども時代の受難が明らかになります。

 クリスマス直前のアイスランドの寒々とした気候とあいまって、明るい雰囲気とは縁のない作品なのですが、読み始めると止まらなくなります。

 それは、思いもしないシチュエーションで殺人事件が発生(発覚)するところから始まり、ひと息つく間もなく、次々と怪しい、つまり犯人だと疑いたくなる人物が登場し、そんな疑われるような態度や行動におよんだのはなぜかという謎が、ひとつひとつテンポよく解き明かされるからだと思います。また、怪しい人物それぞれが抱えている問題にリアリティがあり、小さなドラマが見え隠れしていて、眼を離せないのかもしれません。そして何より、割り切れない、グレーの部分が残されているために、事件の現実味が増すのだと思います。
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