2018年09月23日

「浪花少年探偵団」

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東野 圭吾 著
講談社 出版

 最初に驚いたのは、東野圭吾は、こんなタイプの本も書くのかということです。軽快でユーモラスなミステリ短篇集で、25 歳の独身教師しのぶセンセが教え子の小学生たちを引き連れ素人探偵として活躍します。

 次に驚いたのが、会話がほぼ大阪弁で進行する点です。著者プロフィール欄を読むと『大阪府生まれ』と書かれてありました。関西弁話者以外の方々にとっては、読みにくかったり、冗談に聞こえない会話があったりするのではないかと気になりましたが、関西出身者にとっては違和感のない会話で、しかもコメディタッチでサクサク読めます。

 ミステリとしてトリックがどうこういう以前に、漫才と似た感じで、しのぶセンセと周囲の人たちとの掛け合いを楽しむ作品かと思います。

 (関西弁話者が) ちょっとした時間潰しに読んでリフレッシュするのに最適だと思います。わたしは、しのぶセンセの優しいながらも歯に衣着せぬ物言いを読んだら、少しストレスが軽くなりました。
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2018年09月22日

「経済ってそういうことだったのか会議」

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佐藤 雅彦/竹中 平蔵 著
日本経済新聞社 出版

『経済』ということばを日常的に耳にしているわりに理解していなかったと知ることができました。

 たとえば通貨 (主権)。当たり前すぎて考えたこともありませんでしたが、日本は国内どこでも通貨は円です。つまり、沖縄も東京も同じ通貨を使い、金融政策も同一です。もし、沖縄の景気がとても悪く東京の景気がとても良かったとしても、それぞれ異なる金融政策をとることはできません。(景気の良い東京では引き締め、景気の悪い沖縄では緩めるといったことは不可能です。)

 そうなるとどうなるか。この本では、景気の悪いほうから景気の良いほうへ、人のほうが動くと説明されています。東京一極集中状態を見る限り、その説明は正しいように見えます。

 そう考えると同一通貨の範囲は、インパクトの大きい問題だということになります。たとえば香港が中国に返還されたとき、通貨は米ドルにペッグした香港ドルを維持しました。また、イギリスは、EU に加盟してもポンドを使い続けました。『通貨主権』について考えたこともなかっただけに当たり前だと思っていたことへ至った決断があったことに今更気づきました。

 さらにこの本では日本の通貨、円が国際化する (円で国外での取引が可能となる) ことによって、為替リスクを負わずに済むというメリットが生まれるいっぽうで、日本銀行のコントロールが及ばなくなるデメリットがあると説明しています。日本と関係のある国や地域で円のマーケットができると、そこでの需要と供給で自由に取引が行なわれて円の金利が決まり、日銀が国内の通貨量を増減させることによって金利を調整しようとしても、最終的には外からの影響を受けて円の金利が決まってしまい、通貨主権が結果的に放棄されてしまうわけです。

 仮想通貨が加わったこれからの時代、通貨はどうなっていくのでしょうか。経済をテーマにしたこの本のなかで、それが一番気になりました。
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2018年09月21日

「The Green Mile」

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Stephen King 著

 Stephen King の本は、著者名がタイトルの数倍大きく書かれているのが一般的です。それだけ、読者の期待を裏切らない作家だということなのでしょう。

 この作品もそうでした。最後の最後まで気になる謎が残り、それが明かされるまで読んでしまいました。もちろん、この作品の魅力は、伏線とその回収といった構成だけではありません。それぞれの登場人物を通して見える人生の現実に共感したり、学んだりする点が多くありました。

 この作品には、常識を超えた力をもつ人物が登場しますが、その非現実性を超える圧倒的なリアリティを感じました。誰も持たない能力を持つ人が活躍してハッピーエンドを迎えると、そんなことは起こりえないと根拠もなく思ってしまいますが、特殊な能力の代償があまりに大きいと、なぜか現実的に見えてしまいます。

 リアリティとは『割り切れないもの』と言い換えられるのかもしれません。表裏一体の関係にあるものごとの表側しか見ないのではなく、この小説の主人公が語るような裏側も描かれると、一気にリアリティが増すように思えました。

 そのリアリティのなかに人生の哲学を見た気がします。
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2018年09月12日

「無趣味のすすめ」

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村上 龍 著
幻冬舎 出版

 著者個人の価値観が前面に出ているエッセイ集です。世の流れなどを忖度せず、自分の考えを表明している点に好感がもてました。

 そのきっぱりとした物言いに対し、受け入れられないと思ったり、なるほどと納得したり、さまざまな反応が起こる自分を見て、自らの価値観を再認識することができたと思います。

 共感できたことばを抜き出してみました。
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理想的なビジネスパートナーというのは、「その人がいなければやっていけない」ということではない。(中略) 一人でも充分にやっていける人同士が信頼とビジョンを共有することで、初めて理想的なパートナーとしての一歩を踏み出すことができるのだ。
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 ビジネスパートナーに限らず、パートナー全般に当てはまることだと思いました。
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読書というのは、必要に応じてすればいいもので、親や教師や上司に勧められて本を手に取ってもあまり意味がないし、また読書をすればそれでOKというものでもない。(中略) 読書が重要なのではない。情報に飢えるということが重要なのだ。
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 日々本を読むなかで、どうして自分が本を読むのかわかっていませんでした。情報に飢えているという自覚があるから本を読み続けているように思えました。

 同意できない内容であっても、著者の意見がすんなりと伝わってきたのは、さすが売れる本を書き続けている作家だと思います。
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2018年09月11日

「数式を使わないデータマイニング入門」

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岡嶋 裕史 著
光文社 出版

 データマイニングを日常的に使っていることばだけで説明している点と手法だけでなく活用場面等を含め広く浅く説明している点で参考になりました。

 たとえばクラスター分析ひとつとっても、『重点』ということばすら使っていません。しかも、k-平均法 (k-means method) だけを、4 つのクラスタにわける例を次のような図で説明しています。

 まず、モビルスーツの分布があります。(モビルスーツが何かはわからなくても問題ありません。)
20180911「数式を使わないデータマイニング入門」図6-6.png

 4 つのクラスタそれぞれの中心点を設定します。
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 次に、プロットされた情報をそれぞれ一番近い中心点に割り振ります。
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 その結果、それぞれの情報が属するクラスタが仮に決まります。
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 仮のクラスタそれぞれの中心点がどこにあるか再計算します。
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 中心点が移動したクラスタがあった場合、もう一度、それぞれの情報を一番近い中心点に割り振り、どのクラスタに含まれるのか判断しなおします。この手順を中心点が移動しなくなるまで繰り返します。
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 最終的には、中心点が移動しない安定した形が得られます。
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 k-平均法のクラスター数をどう設定していくかという話を飛ばして、クラスター数は 4 となっています。

 わたしのように何となくわかった気になっているだけだと、ここまでバッサリと情報を落としていけないので、見習いたいと思いました。
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2018年09月10日

「ココロの止まり木」

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河合 隼雄 著
朝日新聞社 出版

 身近な話題をタネに、著者の多岐にわたる活動や臨床心理学者としての博識が披露されていますが、押しつけがましさがありません。

 印象に残ったのは、日本の神話と精神に関する話題です。

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 日本神話の全体としての特徴は、「均衡」ということであろう。ふたつの対立する力のどちらかが勝ち、どちらかが敗れる、というのではなく、ふたつの力が均衡し共存する。これは世界の神話のなかでも珍しいと言ってよく、示唆するところの大きいことである。
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 また、こうもいってます。

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 日本神話の中心にいる神は、名前があるだけでまったく何もしない。「空」の状態なのである。ところが全体として見ると、多くの神々が反発したり、協調したりしながらも、うまくバランスをとって全体構造をつくりあげている。
 どれかが強くなって中心を占めそうになると、それに対抗したり、揺り戻そうとする力が生じて、結局はうまく中空均衡の状態に戻される。これが実に巧妙に行われるところに、日本神話の特徴がある。
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 この「中空均衡構造」は、日本人の特性を考えるうえでヒントを与えてくれると著者は、書いたうえで、比較対象に「原理中心統合構造」をあげています。

「原理中心統合構造」とは、一神教の神のような絶対的な存在が中心にいて、明確な原理を示し、力を持っていて、全体はそれによって統合されていると説明されています。

 もし日本にトランプ大統領のような党首があらわれたら……、もしアメリカ政治に日本の与党と野党のような足の引っ張り合いが持ち込まれたら……。いろいろな『もし』が思い浮かびましたが、スピードが求められる現代においては、日本人も「中空均衡構造」の一部を壊して、「原理中心統合構造」を取り入れる余地をつくるべきかもしれません。
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2018年08月28日

「たったひと言で変わる! ほめ言葉マーケティング」

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田村 直樹/藤咲 徳朗 著
コスモトゥーワン 出版

 高い従業員満足 (ES:エンプロイーサティスファクション) が、高い顧客満足を生みだすという論理 (インターナルマーケティング) は、納得のいくものです。だから、従業員満足をあげるために、褒めるという行為をビジネスの場にも取りいれていきましょうという考えも理解できます。

 ただこの本を読んでその内容を実践しようという気にはなれませんでした。説明のためにものごとが簡略化されすぎていて、実際に起こりうる問題を解決できるレベルの知識は得られないからです。

 たとえば『ありがとうメッセージ』を社員同士で伝えあうカードを作ることが紹介されています。『Thank you カード』を書くというイベントを社内で経験したことがありますが、末端レベルでは、下位ポジションの社員は、上位ポジションを褒めることを強いられているようにしか受けとれないと大変不評で、残念ながら不評のまま打ち切りとなりました。

 本書でも、『ストローク』(交流分析における、人々の会話や笑顔のやり取り) の解釈には個人差があることが説明されています。つまりポジティブな意味で発したことばも、ネガティブに受けとられることはあるということです。『Thank you カード』でわたしたちが経験したこともそれと同じですし、そういった経験は誰にでもあると思います。

 わたしが知りたいのは、伝えたいと思った内容と違う受けとり方をされた場合、それをどう把握し、どう修正していくかです。基本のキだけでなく、もう少し実践的な内容があれば良かったと思います。
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2018年08月16日

「テルマエ・ロマエ T-Y」

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ヤマザキマリ 著
エンターブレイン 出版

 何十巻と続くコミックは、途中で挫折することが多いのですが、これは 6 巻だけで完結するし、おもしろいと勧められて読んでみました。

 紀元 129 年のローマの浴場設計技師ルシウスが、現代の日本のお風呂に移動してしまうタイムスリップものです。その後数年にわたり何度か古代ローマと現代日本を往き来するようになります。(ルシウスは、2000 年近くもあとの時代に移動したとは認識せず、なぜか属州地に移動したと認識している設定です。)

 日本のお風呂のあれこれにいたく感動したルシウスは、それらをローマの浴場に取り入れるのですが、そのルシウスの四角四面な態度が笑いを誘います。

 映画になったのも納得のおもしろさでした。

 長風呂で周囲を驚かせるわたしですが、このコミックで描かれているとおり、お風呂は、寛げ、かつ、考えごともできるいい空間だと思います。ただ、そういった考えが古代ローマにもあったという想定で展開するのには驚きました。
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2018年08月15日

「遭難信号」

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キャサリン・ライアン・ハワード (Catherine Ryan Howard) 著
法村 里絵 訳
東京創元社 出版

 失踪とか行方不明というのは、自らの意思で存在を消し去ろうとした可能性も事件に巻きこまれた可能性も考えられ、それだけで謎めいて見えます。そこにどんでん返しを仕込みたいとミステリ作家が思うのも自然かもしれません。

 この作品のなかで、ひとつの話題としてそのタイトルが挙げられている「ゴーン・ガール」も、最後に驚くような展開が待っていましたし、この作家もそういった作品を意識して書いたのかもしれません。

 クルーズ船に乗ったあと行方不明となったサラの恋人アダムは、サラに何かあったに違いないと考えるいっぽう、警察は、成人女性が嘘のアリバイをつくって行方をくらました場合は家出だと考えるのが妥当だと判断します。

 単なる家出ならミステリとして成り立ちにくいこともありますが、アダムの視点だけでなくロマンという青年の子供時代の視点やクルーズ船のクルーの視点が差しはさまれてストーリーが進行すること、冒頭にアダムが海に落ちるシーンがあることから、ある一連の事件にサラが遭遇したに違いないと思われました。

 しかし、最後の最後で予想外の展開が待っていました。読み終えると、フーダニットでもハウダニットでもなく、ホワイダニット作品だったような印象です。大切な人が突然いなくなった人の心情としては『なぜ』行方不明となったのかを知ることは最大の関心事なので、その点をクリアにする結末に向かっていくのは、終わり方としては自然なのかもしれません。
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2018年08月09日

「日本でいちばん小さな出版社」

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佃 由美子 著
晶文社 出版

 出版社のすべての業務、企画も編集も DTP も営業も経理も、たったひとりでこなしているのが、この本の著者です。どうしてそんなことになったかという経緯から始まり、なんとか先行きの目処が立つようになった頃までの道のりが書かれています。

 出版業界の特殊性をある程度知っていたので、よくやるなあと少し呆れた感じで読み始めたのですが、自分が著者に似ていることに気づいてからは、応援したくなりました。

 本 (厳密には紙の本) が好きなこと、人が見ていないところでも社会のルールを守りたがるところ、ローリスク・ローリターンで利益を出そうとする慎重さ、ブラックボックスとなっている仕組みに対し想像を巡らしてあれこれ試しボックスの中身を解明しようとする行為など、わたしが著者に似ているところをあげれば切りがないほどですが、著者のように出版社をやりたいなどとは、決して思いません。

 なにしろ取次口座を持っているということが、日本でいちばん小さなこの出版社の凄さ、著者の行動力の真似できないレベルなどをあらわしていると思います。
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