2020年09月03日

「難しいことはわかりませんが、統計学について教えてください!」

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小島 寛之 著
SBクリエイティブ 出版

数字に騙されないための 10 の視点 統計的な?」を読んだのをきっかけに、統計でどんなことができるか、工夫次第でうまく伝えられるようになれるかも……と思うようになり、統計関係の本を少しずつ読んでいて、これもその 1 冊です。

 本書では、ストーリー仕立てで統計の手法が扱われているのですが、『標準化』の例は参考にしたいと思いました。某大学のミスキャンパス候補 (ファイナリスト) の体型データをもとに、ミスキャンパスに選ばれた者がプロポーション面で、どう抜きん出ているのか数値であらわしてみようという試みです。

 以下のサンプルデータを見ると、ファイナリストはみなスタイルがいいように見えます。

20200903「統計学について教えてください!」1.png

 これを標準化すると、次のようになります。

20200903「統計学について教えてください!」2.png

 これらの数値はすべて、ファイナリストの平均にどれくらい近いかをあらわしています。(0 に近いほど平均に近いことをあらわします。) 赤枠の数字が目を惹きます。

 Aは、身長も体重も平均を大きく下回り、このサンプルのなかではとても小柄なのが、一目瞭然です。また、Fは、体重やウエストはほぼ平均なのにバストもヒップも平均を大きく上回り、いわゆる『ボンッキュッボン』なのが、わかります。

 標準化は、身長と体重といった単位の違うものの比較を容易にするメリットがあり、次の式で簡単に計算できます。(サンプル数によっては、それこそ電卓でも充分です。)

 {(データ) − 平均値} ÷ 標準偏差

 標準偏差は、データの偏差 ({(データ) − 平均値}) を二乗してから合計し、データの数で割り、その平方根を求めるとわかります。

 二乗してからルートを取るなどと面倒なことをする理由がわからなくても、標準化するメリットについては、このデータを見るとよくわかるので、巧みな説明だと思いました。
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2020年09月02日

「医学統計の基礎のキソ 1」

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浅井 隆 著
アトムス 出版

 タイトルに「基礎のキソ」とあるとおり、統計の基礎が説明されていますが、その説明手順が、目からウロコでした。

 たとえば、有意差について説明するとき、帰無仮説 (null hypothesis) にもとづいて仮説検定を行ない、P 値をもとに帰無仮説を棄却するか、対立仮説を採択するかが決まるという流れで説明されることが多いように思います。しかし、本書では、いろいろある仮説検定をすべて素っ飛ばし、有意差と P 値の関係をいきなり説明しています。

 しかも、95% 信頼区間を求め、ゼロが含まれていれば有意差がなく、逆にゼロが含まれなければ有意差があるという関係を示し、仮説検定なしに有意差を推定できると説明しています。

 つまり、正しい統計結果を出せるようになるより、まずは統計結果を正しく理解できるようになることを目指しているわけです。

 統計には挫折してばかりという方には、星五つ級にお勧めの書籍です。次のような内容がカバーされています。

−有意差 (significant difference)、P 値 (P values)、有意水準 (significant level)
−帰無仮説 (null hypothesis)、仮説検定 (hypothesis test)
−信頼区間 (confidence interval)
−平均値 (mean) = 算術平均値 (arithmetic mean) / 中央値 (median)
−標準偏差 (standard deviation、SD、S、σ)
−四分位範囲 (inter-quartile range)
−平均の信頼区間 (confidence intervals of the mean)
−3 の法則 (rule of 3)
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2020年09月01日

「ぶれない―骨太に、自分を耕す方法」

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平山 郁夫 著
三笠書房 出版

 あらゆる方の人生にあてはまる教えが詰まった本だと思います。そうは言っても、人生を豊かに過ごすための基礎といえる内容なので、もっと若いころに読みたかったと思います。

 印象に残ったのは、次のようなことばです。
++++++++++
失敗しても失敗してもくじけずに努力する姿が「生 (せい)」そのものだと思う。そこに人間としての美しさがあり、美しさは必ず相手に伝わる。
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 この美しさが、品位や品格ということばで表現され、画品 (絵の品格) に影響すると述べられている箇所もありました。
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品位や品格というのは、無理やりひねり出すものではなく、自然とにじみ出てくるものだと思います。にじみ出るものが何もなかったり、希薄だったりすれば、どんなに技術的なことを取り繕っても、いつかは馬脚をあらわしてしまいます。何事についても、人間的な修行が大切だというのは、にじみ出る中身、品格を充実させるためなのです。
++++++++++

 修行については、次のような表現で説明されています。
++++++++++
石をみがくのと同じ気持ちで、『より美しく』という純粋な気持ちを持って自分をみがく。
++++++++++

 純粋な気持ちというのは、損得勘定でもなく、どこかで役立てようという功利目的でもなく、自分を立ち上げていくことだそうです。

 もし、生きることが自分をみがくことだというのが本当なら、救われます。そしてみがくとどうなるかについては、こう書かれてあります。
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芸術家だけでなく、何事においても、技術のあるなしに関係なく、一番必要なのは世界観や理念でしょう。これをみがいてこそ人は大きくなり、みんなが納得してついてくるような『ぶれない人間』になるのだと思います。
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 この本を通して、この大家が、偉大なことを成し遂げただけでなく、品格ある偉大な方だという印象を受けたので、機会があれば、しまなみ海道にある平山郁夫美術館を訪れてみたくなりました。
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2020年08月22日

「ぶり返す世界恐慌と軍事衝突」

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副島 隆彦 著
祥伝社 出版

 2012 年出版の本書の予測を読むのは意地悪なのですが、いまのパンデミックを考えると、戦争景気に魅力を感じる方々も増えるのではないかと、素人ながら心配になり、タイトルの「軍事衝突」を見て、この本を引っぱり出しました。

 著者は、わたしたちは歴史から学ぶべきで、@ 大災害が来て、A 大恐慌が来て、そして B 戦争が来るというパターンを忘れてはならないと警鐘を鳴らしています。歴史を見るとその繰り返しだから……というのがその理由で、これは歴史の法則であり、運命だと言っています。

 いまの新型コロナは、ひとつの大災害だと思います。このあと大恐慌がくるのか、この大災害を乗り越え恐慌を避ける知恵が現代の各国のリーダーにはないのか、注視したいと思います。

 そしてもう 1 点、景気の動向を予測するのは、誰にとっても難しく不可能といってもいいのかもしれないと、あらためて思いました。著者による、60 円台まで円高が進むという予測も、さる大手金融機関が破綻するという読みも、東京都心のタワーマンションさえ価格が下落するだろうという見込みも、的中していたとは言い難いと思います。

 恐慌が来る可能性を無視することもなく、景気動向予測に振り回されることもなく、過ごしたいと思います。
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2020年08月21日

「この英語、訳せない! head は頭? 顔? 首?」

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越前 敏弥 著
ジャパンタイムズ出版 出版

 この本のサブタイトルになっている『head』の項では、"The man's head was gray and red." という例文が紹介されています。

 head は、顔も含めた、首から上の部分を指します。日本語にすれば『頭部』ですが、やや堅苦しいので『顔』と訳したほうが適切な状況もあると著者は言います。また、『生首』ということばが頭部全体とほぼ同じ意味であることからわかるように『首』という訳語を用いるのもひとつの方法だと説明されています。

 先の例文は小説からの引用だそうですが、白髪で赤ら顔だということを、まわりくどく説明しているそうです。それを翻訳家として著者は『頭と顔では、灰色と赤が幅を利かせている』と訳し、原文よりわかりやすくしすぎるのを避けたそうです。

『head』以外の項で参考になったのは、『insight』と『floor leader』です。

『insight』は、わたしが持て余してしまう単語で、『洞察』などが並ぶ英和辞書を見ても答えを見つけられません。著者は、オンライン辞書サイト「dictJugller.net辞遊人」には、「ひらめき」「知識」「感覚」といった過去の訳語が掲載されていて参考になると紹介するいっぽう、自らの訳も披露しています。

-it seeks to order chaos and gain insight into life
混乱を秩序へ変え、人生についての深い知恵を与えてくれる

-to gain insight into how this news will be received
はたしてこれをどう受け止めるのか、参考にしたい

-Your insights during our last conversation helped make this night possible.
最後に会ったときのあなたの意見のおかげで、この夜の集いが実現したのですから。

『floor leader』は、辞書に『院内総務』と載っています。しかし『院内総務』が米国議会においてどういった立場の人物を指すのか、わたしは知りませんでした。本書では、以下のように説明されています。
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 2 大政党である共和党 (Republican Party) と民主党 (Democratic Party) のどちらにも、党首にあたる役職はありません。そこで、連邦議会でも州議会でも、両党の代表をつとめるのがこの院内総務です。上院 (Senate) でも下院 (House of Representatives) でも、多数党の院内総務が majority leader、少数党の院内総務が minority leader と呼ばれます。多数党・少数党は各院の議席数で決まりますから、かならずしも大統領の出身政党が多数党というわけではありません。

 院内総務は両党の代表であると書きましたが、厳密に言うと、下院では多数党の最有力者が議長をつとめるので、多数党の院内総務は実質的にはナンバー 2 にあたります。また、連邦議会の上院では、副大統領が議長を兼任するならわしとなっています。
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 どの項も、小説などに登場した具体例をもとに説得力のある説明がされていて、日本と欧米の言語や文化の違いに興味をもてました。
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2020年07月30日

「数字に騙されないための 10 の視点 統計的な?」

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アンソニー・ルーベン (Anthony Reuben) 著
田畑 あや子 訳
すばる舎 出版

 わたしが数字を見るときに気をつけていることが、この本の終わりのほうに書かれてありました。アンケート調査や経済モデルを見るときに『最初にすべきことは、その調査を実施したのは誰で、それに金を払っているのは誰かを確かめることだ。それによって正当化されるキャンペーンをしているグループが発注している場合は、その結論を少し疑うべきだが、独立したグループであっても、かたよったグループと同じように間違う場合がある』。

 しかし、それよりもっと端的なヒントが最初に記されていました。『これは真実だとしたら理にかなっているだろうか』。その数字が本当だったら理屈に合わないと思ったら、疑うべきだということです。

 そう言われても、理にかなっているか何をどのように評価すればいいか、なかなかわからないものです。だから著者は、こういうときは特に注意すべきという具体例を 10 点あげています。

 たとえば、実数がなくパーセントだけ表示されているときは、注意が必要だと警告しています。『毎日ソーセージを 1 本かベーコンを 3 切れ食べていれば、膵臓がんの発症リスクが 20 パーセント上昇する。』とあった場合、わたしなどは反射的にソーセージやベーコンを食べるのが怖くなります。しかし、実数を見ると、違う印象を受けることもあります。具体的には、1 日にソーセージを 1 本かベーコンを 3 切れを食べていなければ、400 人中 5 人が (生涯で) 発症し、それらを食べていれば、6 人に増えるという実数です。

 また、原価計算も危険だと注意を促しています。その理由は、 算出方法次第で、何かを安く、あるいは高く見せることが簡単だからです。まず、特定ケースの原価を見せる動機を考え、そのコストが特定ケース以外でも負担されるものか、あるいはその特定ケース限定の追加費用かを確認して、目の前の原価計算にどれだけの信頼がおけるか判断するよう勧めています。

 いつも、わたし自身がうまく説明できない単語『信頼水準』と『信頼区間』についても、ONS が出す失業者数を例に『失業者数の変化を表す数字は一般的には信頼水準 95 パーセントで約 7 万 5000 の信頼区間であるが、その意味は、失業者数の変化は ONS が出した数字のプラスマイナス 7 万 5000 の範囲であることに 95 パーセント確信をもっているということ』と、わかりやすく説明しています。

 数字に騙されないようにするためのコツがつかめるようになる良書だと思います。
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2020年07月29日

「星に仄めかされて」

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多和田 葉子 著
講談社 出版

 この「星に仄めかされて」は、「地球にちりばめられて」から始まる 3 部作の 2 作目です。スタイルは、前作から継承されていて、登場人物それぞれの視点で語られます。

「地球にちりばめられて」の最後で、Hiruko は、自分と同じ母語をもつ Susanoo と漸く会えたと思ったのもつかの間、彼がひと言も発しないことから、失語症ではないかと疑い、その治療のために医師のもとに連れて行くことになりました。その医師は以前、クヌートと天文言語学のゼミで一緒だったベルマーです。

 本作の『第 2 章 ベルマーは語る』で、中年男性のベルマーは、自身のことをこう語っています。『自分がみんなに嫌われているなど考えてみたこともなかった。「自分」という名前の楽しい闇の中で生きていた。どこが壁なのか分からないので、狭いと感じることがない。自分というものの輪郭は見えない。自分のいる空間全部が自分だから無理もない。』

 いわゆるジコチュウの心のなかは、まさしくこんな感じなのだろうと思いました。その納得感は、ジグソーパズルのピースがぴたりとはまったときと似ています。なんとなく探していたけれど、どういう色か形か触感か、はっきりとは知らず、目の前に差し出されたとき初めて、間違いないと確信をもてたような感じです。

 多和田作品を読んでいると、なんとなくわかっていたけれど、ことばにしてあらわすとこうなるのか! と、初めてわかったような文に巡り合います。その感覚をまた味わいたくて、ときどき多和田作品を読みたくなってしまうのかもしれません。
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2020年07月28日

「地球にちりばめられて」

20200728「地球にちりばめられて」.png

多和田 葉子 著
講談社 出版

 この「地球にちりばめられて」は、3 部作の 1 作目で、群像劇のような小説です。第 1 章から第 10 章までそれぞれ『〜は語る』と、それぞれの視点で語られます。

『第 2 章 Hiruko は語る』で語る Hiruko は、留学を終えて母国である、中国大陸とポリネシアの間に浮かぶ列島に帰ろうとしていた直前に母国が消えてしまい、自分と同じ母語を話す人を探す旅に出ます。その旅に同行するクヌートは、デンマークに住む言語学者の卵です。

 ふたりの接点は、あるテレビ番組でした。帰る国を失った Hiruko は、留学先のスウェーデンに定住できず、ノルウェー、デンマークと移り住みます。短期間で三つの言語を習得したものの、それぞれをきちんと使い分けるのは難しく、スカンジナビアの人なら聞けばだいたい意味が理解できる、『パンスカ』(『汎』という意味の『パン』に『スカンジナビア』の『スカ』をつけた造語) という人工語を作りだし、出演したテレビ番組ではパンスカでインタビューに答えました。

 その番組を見たクヌートは、Hiruko 自身に惹かれたのか、彼女が作ったパンスカに惹かれたのか、同じ母語を話す人を探しに行く Hiruko について行きます。

 Hiruko が最初に尋ねた人物は、彼女と同じ母語を話すことは話しましたが、独学で学んだだけで、彼自身はエスキモーでした。Hiruko は、落胆するでもなく『あなたに会えて本当によかった。全部、理解してくれなくてもいい。こうしてしゃべっている言葉が全く無意味な音の連鎖ではなくて、ちゃんとした言語だっていう実感が湧いてきた。』と言います。

 そのエスキモーの彼のほうは、グリーンランドで、アメリカの会社にリモートで働く父とスイスの会社にリモートで働く母のもとで育ちました。生活に不自由はありませんでしたが、『このまま行くと俺たちは何世代も家を出ないまま、インターネットだけで世界経済と繋がって生きていくことになってしまうんだろうか。でも、もしもディスプレイにあらわれる世界が誰かのつくりもので実際にはすでに存在していないとしたら、どうなんだ。』そう考えるようになり、父親から外国に留学するように勧められたのを機に家を出ていました。

 多和田作品を読むといつも、言語に対する新しい視点や気づきを得るのですが、今回はそれだけでなく、COVID-19 の影響で、コミュニケーションが制限された暮らしをしているため、言語を使ったコミュニケーションについても思うことがありました。
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2020年06月23日

「人は囚われてこそ−囚われで読み解く現代ストレス社会そして瞑想」

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澤田 幸展 著
柏艪舎 出版

 タイトルにある「囚われ」を著者は『心理社会的欲求に突き動かされること』と定義しています。欲求といえば、三大欲求ということばを思い浮かべますが、著者は、農業革命、産業革命、情報革命を経て三大欲求が、(1) 承認/所属欲求、(2) 金銭/交換欲求、(3) 支配/コントロール欲求という心理社会的欲求へとバージョンアップしたと述べています。

 (1) から (3) それぞれは、ことばどおりの意味で、特に (2) は昔、つまり昭和の時代からずっとあったように思ういっぽう、情報革命を機に、つまり SNS など承認を得ることができるツールの登場以降、(1) の欲求が以前より強まったのではないかと思いました。

 さらに承認欲求について著者は、日本人の場合「裏の承認」に対する欲求が強いと述べています。日本人は周囲の目を強く意識するため、承認を必要とするいっぽう、能力や業績が称賛されるとか個性が尊重されるといった「表の承認」をあまり歓迎せず、和や規律ないし序列を大切にしている姿、奥ゆかしさや陰徳が良しとされる「裏の承認」を優先的に求める傾向が強いと説明しています。

 わたしの目には、それは屈折した心理に映りますが、それゆえに欲求がエスカレートし、どんどん欲求に囚われていく気がします。たとえば仕事において、業績をあげるには能力も努力も必要とされます。いっぽう、和や気遣いなどで認められるには気を張って気配りを絶やさなければ実現可能に思えるからです。誰にでもできそうだからこそ、欲求に囚われやすくなるのかもしれません。

 そうした欲求に過度に囚われることなく、ほどほどに囚われながら過ごすための方法が本の終わりのほうで紹介されているので、欲求に囚われ過ぎかもしれないと思われる方には参考になると思います。
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2020年06月22日

「マリアさま」

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いしいしんじ 著
リトルモア 出版

雪屋のロッスさん」以来久しぶりに、いしいしんじの短篇集を読みました。

 短篇や掌篇と呼ばれるような長さの作品が 27 篇収められています。(「マリアさま」という作品はありません。)共通するテーマがあるようには見えず、日常生活を切りとったような作品から、ファンタジーのような寓話のような作品まで、いろいろです。初出を見ると、広告誌と思しきものも含まれ、雑多な媒体から集められたようです。

 読後感は「雪屋のロッスさん」には遠く及ばず、正直なところ落胆しました。この作家に対する期待が知らないうちにこれほど高まっていたとは自分でも意外でした。

 そのなかで印象に残った作品は「土」と「船」です。前者は、からだから土がわいてくるようになった男を見舞った友人が語る話です。後者は、家族で乗船した少年がひとり、船が転覆することを予測し、それを伝えるべく就寝後にベッドを抜け出す話です。

 どちらも不安と安堵を得たいという感覚に共感できました。停滞感のあるときだけに、より印象に残ったのかもしれません。
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