2013年11月26日

「オリーブも含めて」

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アンドレア・ヴィターリ (Andrea Vitali) 著
久保 耕司 訳
シーライトパブリッシング 出版

 なんとも説明しがたい読み心地の本です。イタリアのベッラーノという小さな町が舞台です。かなり個性的な面々が次から次へと登場します。そして時代も、冒頭の1936年から遡ったり現在に戻ったり、最初の部分は目まぐるしく展開します。そして登場人物が多いことよりも、時代が前後することよりも、流れが掴みきれないような、宙ぶらりんな感じがするのは、何にフォーカスすべきか理解できないせいです。

 冒頭で、老女が遺体で発見されます。医師は、自然死として処理するのですが、自然死ではないと確信する女性がいるのです。

 そうくれば、『老女の死の真相を探る展開?』と思ってしまうものです。でも、そう期待して読み進めても、そういう風には展開してくれません。次から次へと新たな登場人物があらわれ、次から次へと話題が転じ、主人公のいない物語なんだとわかっただけで、五里霧中としかいいようのない状態が続きます。そしてやっと「オリーブも含めて」というタイトルになっている表現があらわれます。

『まさかこれが、主題? それはないでしょう!』

 そんな驚きがあっても、いままでと違った風景が見えるでもなく、同じように物語は進みます。

 だから、この本はつまらないというつもりは毛頭ありません。予測や期待が裏切られる流れそのものが、人が生きるということを示しているようであり、その思い通りにならないあたりがユーモラスに描かれているところが、この作品の良さではないかと思うのです。

 掴みどころがないものの、後味も悪くなく「人生、そういうものかもね」と頷きたくなるような作品でした。
posted by 作楽 at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする