2014年05月24日

「すばらしき特殊特許の世界」

20140524「すばらしき特殊特許の世界」.jpg

稲森 謙太郎 著
太田出版 出版

女子大生マイの特許ファイル」がおもしろかったので、同じ著者の本を読んでみました。

 直木賞受賞作品の「下町ロケット」で特許が登場するのですが、特許をとるといっても、良いとり方を悪いとり方があると説明されています。ある目的を達成するために何かを発明した場合、その範囲を狭めすぎて特許をとっても意味がないというのです。その特許を避けて、同じ目的を達成できる似たようなものが作られてしまうようでは、特許が意味をなしません。

 この本では、その逆のケースが登場し、読んでいる側をヒヤヒヤさせます。特許の範囲を広げすぎるというか、そんな「物の発明」特許を持っていたら怖いものなしというレベルの冷凍枝豆特許が登場します。

 冷凍枝豆特許に限らず、具体的な特許をとりあげ、それぞれの説明のなかで、特許の範囲、特許庁の審査基準、制度の変遷など、複数の観点から特許を知ることができる構成は、「女子大生マイの特許ファイル」同様、成功していると思います。

 とりわけ、身近な食品に関係している、前述の冷凍枝豆特許や切り餅特許については、強烈な印象がありました。切り餅特許では、読点ひとつが問題になっていて、特許の話なのかギャンブルの話なのか、わけがわからなくなるほどです。この切り餅特許が出願されたとき、おそらく出願人は読点ひとつが運命の分かれ目になるとは想定していなかったと思われます。

 制度の本来の趣旨や制度そのものの限界など、いろいろ考えさせられた本でした。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月23日

「年収300万円でもプチ資産家になれる!」

20140523「年収300万円でもプチ資産家になれる!」.jpg

水野 和夫 著
三和書籍 出版

 キャピタルゲインとインカムゲインを比較検討し、インカムゲインにメリットがあると説いたあと、賃貸用のマンションを購入して、インカムゲインを得ましょうという展開の本です。

 タイトルの「年収300万円」でわかるように、会社員を主な読者層と想定している本です。「年収300万円でも」ローンを活用すればマンションの賃貸運用ができるという話なので、非正規雇用の方々は読者層として少し厳しい感じがあります。また、300万円の自己資金を前提にしているので、それをすぐ用意できない方々はすぐには実践できない話になってしまいます。そして、300万円を用意できる方々であっても、10年あるいは20年という期間をかけてローンを支払っていくシミュレーションなので、いますぐプチ資産家になれる内容にもなっていません。

 ただ、極力リスクを少なくして手堅く資産形成をするという点においては、やっぱりこのあたりに落ち着くんだろうなと納得できました。バブルが弾けるといった自国内で起こったことならともかく、サブプライム問題やリーマンショックなど、他国の影響を受けて資産価値の目減りを経験する時代に、この本の想定読者層である20代/30代の方がこういう考え方を知っておくのは、いいことだと思います。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月14日

「女子大生マイの特許ファイル」

20140514「女子大生マイの特許ファイル」.jpg

稲森 謙太郎 著
楽工社 出版

 頭のいい人は、難しいことを易しく説明できるのだという証明のような本です。

 タイトルにあるように、女子大生が特許について学ぶというストーリー仕立てになっているのが、とっつきやすく感じるひとつの要因ではあると思いますが、それ以上に、実例として挙げる特許が一般読者が興味を持ったり理解できたりするものに限定されていること、ストーリーひとつに取り上げる話題を広げすぎていないこと、図や絵を効果的に使っていることなども、わかりやすい説明につながっているのだと思います。

 特許出願の良し悪しが後々のビジネスに大きく影響するという説明を小説などでよく見かけます。その抽象的な説明でぼんやりと理解していたことが、この本によって具体的に理解できました。

 もう少し特許について知りたいと思わせてくれる本でした。
posted by 作楽 at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月13日

「エリザベス王女の家庭教師」

20140513「エリザベス王女の家庭教師」.jpg

スーザン・イーリア・マクニール (Susan Elia MacNeal) 著
垰 香織 訳
東京創元社 出版

 前作の「チャーチル閣下の秘書」でチャーチル首相の秘書を務めたマギー・ホープが、今作でエリザベス王女の数学の家庭教師になるという突飛な転身を遂げました。前作でスパイとして養成されることになっていたマギーですが、実は身体機能面で合格基準に達しなかったため、敵国でスパイとして活躍する道から外れた結果の転身です。

 マギーにとって、なかなか残念な出だしではありますが、それでも誘拐される危険のあるエリザベス王女を家庭教師という姿を借りて目立たないよう警護するという真の任務においてまずまずの結果を残し、次の任務が仄めかされたところで、今作は終わっています。

 マギーの出生の秘密が明らかにされたり、恋人が行方不明になったり、各作品で個別に扱われる事件とは別に、シリーズ全体を通して語られるマギー自身の物語の部分にずいぶんと進展があり、シリーズ作品としての流れが出てきた気がします。

 前作に比べて勢いのある展開とマギーの母親について明らかになった事柄から、次作への期待が高まるエンディングでした。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月12日

「女は笑顔で殴りあう」

20140512「女は笑顔で殴りあう」.jpg

瀧波 ユカリ/犬山 紙子 著
筑摩書房 出版

 (他人よりも上に自分自身がいると信じ込むために)自分自身の下に他人を置こうと必死になっている姿は、かなり見苦しいと思います。

 自分のことを自身で承認するというか評価することはあっても、結局は、評価というものは他者が存在することによって成り立つと考えると、相手を攻撃することによって自らの立ち位置を有利に見せようとする行為は、無意味に思えます。それでも意外とよく見る光景かもしれません。それをこの本では、「笑顔で殴りあう」と表現し、「マウンティング」と名づけています。

「マウンティング」というのは、もともと以下のような意味だそうです。

<<<<<
サルがほかのサルの尻に乗り、交尾の姿勢をとること。霊長類に見られ、雌雄に関係なく行われる。動物社会における順序確認の行為で、一方は優位を誇示し他方は無抵抗を示して、攻撃を抑止したり社会的関係を調停したりする。馬乗り行為。『大辞林』
>>>>>


 この優位を誇示するという行為を女性は笑顔でやってのけると言っているわけです。これでもかというくらい実例を紹介し、分類までしているのですが、なんとなく不毛な気がします。そういう行為を仕掛けていながら、自覚できない方々のために書かれたそうなのですが、そういう自覚のない人たちが、この本一冊で気づけるものなのでしょうか。難しそうな気がします。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする