2014年10月12日

「仏陀の鏡への道」

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ドン・ウィンズロウ (Don Winslow) 著
東江 一紀 訳
東京創元社 出版

ストリート・キッズ」の続編ですが、「ストリート・キッズ」に比べて少しもの足りなさを感じました。それは、主人公の探偵ニール・ケアリーが観察力・推理力・行動力など優れた探偵が持ち合わせているべき能力を駆使して難事件に取り組むというより、美しい女性に溺れてしまい、翻弄されることに終始しているためかと思われます。

 ただそれはニールが、百戦錬磨の強者というより、まだ多感な世代であることのしるしでもあります。まだ24歳だというのに、人生のおよそ半分は探偵の仕事をしてきたとしても、やはり、そこは24歳らしいナイーブさを残しているということでしょう。

 はり巡らされた伏線や複雑なプロットは、前作同様に楽しめました。

 また強烈な個性の持ち主、ニールの父親代わりジョー・グレアムの登場が少ないのは残念ですが、代わりに、ニールと中国人青年という同世代ペアの会話が精彩を放っていました。

 シリーズはまだ2作目ですが、ニールという若い探偵は、命を賭した危険なギャンブルにうってでる傾向が顕著なので、このシリーズは、もしかしたらニールの死によって終わるのかも……などと思ってしまいました。

2014年10月11日

「64(ロクヨン)」

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横山 秀夫 著
文藝春秋 出版

 タイトルの64は、昭和64年を指します。少女が誘拐され殺されるという、地方都市では十年に一度くらいにしか起こらない凶悪事件が発生したのが、昭和64年だったために、その事件そのものが「64(ロクヨン)」という符牒で呼ばれるようになりました。

 時効をあと1年残した平成14年、この事件に梃入れするかのような出来事が持ちあがるところから、物語は始まります。

 その冒頭から終始、読み応えのある状況が続きます。警察組織内の組織間の綱引き、職種間の軋轢、登場人物間の衝突など、主人公がパワーゲームに巻き込まれながら、どのように仕事に向き合うかという問題の答えを求めるのが、物語のひとつの軸になっています。そしてその軸と切っても切れない関係にあるのが主人公の家庭の事情です。そしてもうひとつの軸は、もちろん64と呼ばれる殺人事件の全容解明です。

 ふたつの軸があっという間に立ちあがり、勢いよく展開して、最後には重なり合うようにして収束します。目の前に謎があったり、人物描写がリアルなのでつい誰かに肩入れしてしまったり、さまざまな理由で、読むのをやめられなくなってしまいます。

 評判のいい作品だけのことはありました。堪能しました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月10日

「教科書に載ってないUSA語録」

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町山 智浩 著
文藝春秋 出版

「知ってても偉くないUSA語録」がおもしろかったので、その前に出版されていたこちらも読んでみました。

 話題への切り込み方というか批評的視点というか何かが、「知ってても偉くないUSA語録」に比べて物足りない気がしたのですが、全体的に1つの話題に対し割かれている紙幅が少ないため、話題を掘りさげられない事情があったのかもしれません。

 ただ身近な問題を通してアメリカという国を見られるので、こちらもとても理解しやすい内容になっています。たとえば格差社会と漠然と指摘されてもわかりにくいのですが、教育水準が高いとされる大学に進学するのがどれほど大変か(授業料がどれほど高いか)を大学卒業時に学生たちが抱える借金の平均額をもとに語られると、自分がアメリカに生まれていたら、その一線を越えてあがることができたのか疑問に思いました。

 この著者の本をもう少し読んでみたくなりました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(エッセイ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする