2015年02月28日

「失職女子 私がリストラされてから、生活保護を受給するまで」

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大和 彩 著
WAVE出版 出版

 もし仕事がなくなったらどういう状況が待っているのか具体的に想像することができないのでこの本を読んでみる気になりました。

 著者は、やや健康面に不安があるものの東京に住む40歳手前の女性なので、選り好みしなければお仕事はあるのではないかと考えがちですが、実際は派遣の契約が打ち切られて以降、正社員の募集に応募しことごとく不採用通知を受けとるという過酷な経験をしています。そしてタイトルにあるように生活保護を受けることになったのでした。

 時期としてはリーマンショックの頃の話なので、現在は状況が違うのかもしれませんが、結構怖い話です。著者がハローワークで相談した際、仕事は何でもいいと職員の方に告げたとき、きっぱり言われたそうです。その年齢では、いままでの経験を活かした仕事しかできません、『何でも』は通用しませんと。

 海外に移ってしまった仕事やコンピュータが代わりになってしまった仕事の経験しかない人も世の中には大勢いることでしょう。そう考えると、自分の経験が通用する残り期間を常に測っておくべきなのでしょう。大変な時代に生きているのだという実感が湧きました。
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2015年02月27日

「緑衣の女」

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アーナルデュル・インドリダソン (Arnaldur Indridason) 著
柳沢 由実子 訳
東京創元社 出版

 CWAのゴールドダガー賞とガラスの鍵賞を受賞した作品です。

 話は、白骨が発見されるところから始まります。その白骨は、発掘を始めたときから、およそ70年前に埋められたと推定されていました。物語りの舞台となっているアイスランドにおいても、当時はそう豊かな時代ではなく、墓地に埋葬する余裕がなくて住宅の庭に埋められた可能性もあります。それでも何が起こったのかを調べるべく刑事たちは奔走します。そのストーリーと、それに並行して語られるもうひとつのストーリーが交わったとき全貌が明らかになるという構成です。

 冒頭で白骨が70年前から埋まっていたとわかった時点で、そんな昔のことを調べあげて意味があるのだろうかと思いました。たとえ殺人事件だったとしても、加害者も被害者遺族もすでに亡くなっている可能性が高いと思ったのです。

 でも最後まで読んで感じたのは、この作品は、時間が経っても忘れてはいけないことがあると訴えているのではないかということでした。シリーズ4作目のこの作品だけでなく、3作目にあたる「湿地」も事件の発端は昔にありました。シリーズ全体を貫くテーマなのかもしれません。
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2015年02月26日

「ロボット革命――なぜグーグルとアマゾンが投資するのか」

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本田 幸夫 著
祥伝社 出版

 この本では、すでに工場などで活用されている産業ロボットではなく、介護・医療の現場や家庭内などで利用できないか検討されているサービスロボットが中心に取りあげられています。

 そのうえでタイトルにある『ロボット革命』をイメージするとき、画期的な技術が開発され量産化が進み日常生活にロボットが溶け込むような変化を思い浮かべていました。つまり科学技術の面において何かすごいブレイクスルーが起こったことを機に世の中が変わることをイメージしていました。

 でもこの本を読んで気づいたのは『ロボット革命』には、企業経営陣やわたしたち一般市民の意識・考え方に革命が起こる必要があるということです。

 まず最初に、わたしたちの暮らしをより豊かにするために、どのような分野にどのようなロボットを導入するべきかという視点を持つ必要がありそうです。著者によると、ある特定の技術が開発されたから、その適用分野を探そうとする、技術ありきの姿勢が日本では一般的だそうです。それでは必要とされているロボットは開発されません。

 次に、ロボット導入に不可欠な実証実験を思い切って実施する必要がありそうです。現状は、事故が起きたとき責任をとるのは誰かという問題に終始して、実証実験に踏み切れないそうです。使ってみなければ問題点も見えてこないので、この責任問題を打開する何かを考えなければなりません。

 サービスロボットがなくても困っていないから、このまま現状維持でよいとする考え方もわからないではありません。ただこれからの高齢化社会において不足する労働力を補うためにも、『サービスロボットを導入しない』という選択肢を除いて、誰もが考えてみる必要がありそうです。
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2015年02月19日

「砂漠で溺れるわけにはいかない」

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ドン・ウィンズロウ (Don Winslow) 著
東江 一紀 訳
東京創元社 出版

 探偵のニール・ケアリーは、前作「ウォータースライドをのぼれ」で雇用主の朋友会を敵にまわしてクビになってしまいました。それなのに、またもや簡単という触れこみの仕事を朋友会から押しつけられてラスヴェガスへ行かされ、砂漠で溺れそうに……。それでこのタイトルです。

 このシリーズは、この5作目でシリーズ終了と言われています。惜しいことです。

 シリーズ作品を読んでいて、途中マンネリになってきたと感じることは多々ありますが、このシリーズでそう感じたことはまだありません。ニールが変化し成長していることや、舞台を転々としていることや、語り口のバリエーションが富んでいることなどが功を奏しているのでしょう。

 読み飽きるまで読みたいという気持ちのほかにも、お話としてニールのその後を知りたい気がします。なにしろ第3作で出会い第4作で一緒に暮らしていたカレンといったん結婚を決めたにも関わらず今作の終わりでお互い距離を置こうということになってしまったのですから。

 コミカルな掛け合いを楽しんできたこのシリーズをもう読めないのは残念です。

2015年02月18日

「ストーナー」

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ジョン・ウィリアムズ (John Williams) 著
東江 一紀 訳
作品社 出版

 読み終わるまえから、またいつか読み返したくなるに違いないと感じる本です。

 貧しい農家に生まれたウィリアム・ストーナーが思わぬきっかけで大学進学を果たし、文学との出会いをきっかけに農家の道を捨て、大学社会で生きた人生が描かれています。

 同じ世代を生きた人々に比べて(おそらく)格別華やかなわけでも悲惨なわけでもなく、取り立てて何もない人生と言い切ってしまっても差し支えない人生です。それでも、その人生に起こった偶然の出会いや選択、日常的に見受けられる人と人の小競りあいや不協和音、心も身体も慣れ親しんだ安らぎや熱情、それらがどれも細やかに描かれているがゆえに、読んでいるわたしの人生のどこかに重なってくるように感じられます。

 それをどう評価するのかは、個々人の問題で、意見は分かれそうな気がします。事実、この作品はアメリカで出版されて久しく埋もれていました。それが発表から半世紀近く経ってのちフランスで高く評価され、世界中で読まれるようになったそうです。

 ウィリアム・ストーナーは、脚光を浴びるような成功を収めなかったかもしれません。でも、苦しい状況を受け入れるときも、何かを手放すときも、それを誰かのせいにしたことはありません。人生の終わりを迎えるときであっても。その気高さをわたしの人生にも迎えいれたいと思いました。
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