2015年03月28日

「ウドウロク」

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有働 由美子 著
新潮社 出版

 読んでいて気持ちのいいエッセイです。

 理由のひとつは、ご自身の失敗や弱点をある程度さらけだしていることです。しかも痛々しい感じではなくちょっと笑える感じで読めるよう配慮されています。

 ほかにも、仕事をしていくうえで大切なことがさらりと書かれてあるなど、バランスの良さが感じられます。年齢に応じた経験や視点がなければ薄っぺらに見えてしまうものですが、それはありません。

 おそらく40代の働く女性は共感をもって読めるのではないでしょうか。わたしは第一線どころか現役らしく働いている状況でさえないので羨ましいと思いつつ読みました。
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2015年03月27日

「日本語相談 四」

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大野 晋/丸谷 才一/大岡 信/井上 ひさし 著
朝日新聞社 出版

日本語相談 二」同様、この四でも句読点をとりあげた相談に「おや?」と思いました。

 句読点は、そう古いものではないそうです。明治維新以後、西洋の本の影響を受けて、文章に句読点をつけて印刷するようになり、その型に合わせて、筆者が自分で句読点を打ちながら書く風俗が確立したとあります。

 優に千年を超える日本文学の歴史においては、句読点は新参者といっていいのかもしれません。

 短歌や俳句にも句読点を取り入れればわかりやすくなるという読者の問いかけに対して、丸谷氏は、『万葉』の歌に句読点を打った折口信夫の例を挙げて、「模糊たる趣を鮮明にしてしまふ」と評しています。

 誰もが散文を書く時代になってわたしたちは『わかりやすい』ことを必要以上に求めているのだろうか、ふとそう思いました。
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2015年03月16日

「模倣犯」

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M・ヨート/H・ローセンフェルト 著 (Michael Hjorth/Hans Rosenfeldt)
ヘレンハルメ 美穂 訳
東京創元社 出版

 前作「犯罪心理捜査官セバスチャン」の終わりで明かされた驚愕の事実を受けて今作は、主人公のセバスチャンが思いっきり嫌な面はそのままに、桁外れのストーカーぶり(その執着ぶりが頭から離れず、なんの関わりのないわたしの夢にまで出演!?するほど)を発揮して登場します。

 その思わぬ急展開に驚くいっぽうで、「あれ? 何だか見覚えが……」と思う脇役が登場し、シリーズ2作目にしてお馴染みのお笑い部分もできあがり、変化と不変の両方をほどよく楽しめる割合になっています。ただ総じて意外性に満ちていて、いまのところマンネリには程遠いシリーズです。

 ミステリーのシリーズ作品といえば、第1作からではなく途中から翻訳されるものもあって、第1作から読まなくても楽しめるシリーズも数多くありますが、このシリーズを途中から読むのは、もったいないとしかいいようがありません。今作が前作の終盤で明かされた驚きの事実で始まったように、今作もセバスチャンが次に陥る危機を予告して−−次作がいつ出版されるか気になるほど−−終わっています。
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2015年03月15日

「スキッピング・クリスマス」

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ジョン グリシャム (John Grisham) 著
白石 朗 訳
小学館 出版

Skipping Christmas」を日本語でも読んでみました。タイトルでは「スキッピング・クリスマス」となっていますが、本文では『Skipping』を『すっぽかす』としています。守られて当然の約束を反故にするような意味と軽さがあって、ぴったりくる気がしました。

 あと主人公夫妻のご近所に住む子供たちが英語では小生意気に喋っている気がしたのですが、日本語だとずいぶん礼儀正しく感じられました。このあたりは、英語で話している子供を見るとずいぶんしっかりしている印象を受けるのを似ているのでしょうか。

 同じ本を英語と日本語の両方で読むのは、同じ本を立て続けに2回読むのと同じで退屈するのかと思ったのですが、意外にもそうでもありません。こんどまた試してみたいと思います。
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2015年03月14日

「罪の段階」

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リチャード・ノース・パタースン (Richard North Patterson) 著
東江 一紀 訳
新潮社 出版

 ホテルの一室で女性が男性を射殺した事件を扱う法廷ものです。女性はレイプされそうになったうえでの正当防衛を主張しますが、検察は謀殺で訴追しようとします。そう書くと、検察側と弁護側の攻防にハラハラする作品のように見えますが、それで終わる作品ではありません。

 邪悪な人間に関わってしまった途端、人と人が同じ権利を有するということはどういうことか、人が人を裁くということはどういうことか、そういう途方もない問題が突きつけられ逃れられなくなる恐怖を見せつける作品です。

 そのいっぽうで、法のもとに正義を行なうという大義名分の陰で個人の尊厳が踏みにじられるのを良しとせず、最善の道を模索しようとする法律関係者の姿も描かれていて、救いがあります。

 法律に携わる作家が書いただけに、読み終わってすべてが明らかになったあとも公正に裁く難しさをあれこれ考えさせられました。
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