2015年07月28日

「出張鑑定にご用心」

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ジェーン・K・クリーランド (Jane K. Cleland) 著
高橋 まり子 訳
東京創元社 出版

 自らが殺人事件の容疑者になってしまい、素人ながらあれこれ調べだすというコージーミステリの自然な(無難な)始まりです。新発見といったイベントが少なめで、ややスローな展開なのは、主人公であるジョシー・プレスコットがちょっぴり泣き虫で用心深い女性なので、あちこち首をつっこんでは誰かれなく怪しいと言ったりしないからです。そのぶん、今後も活躍しそう登場人物の描写に紙幅が割かれている感じです。

 エンディングもコージーミステリのお決まりで、警察に先んじていると主人公側は思っているものの、プロはプロの仕事をきっちりしていたというもので、意表をつく展開はないものの安定感があります。

 わたし個人の好みとしては、もう少しアクティブで強気な女性が読者をハラハラさせながら活躍してくれるほうが、(現実とは違うという意味で)純粋にフィクションとして楽しめたと思います。あと、ビジネスとしての骨董品については色々語られていますが、骨董品自体がもつ魅力というものをもう少し語ってほしいと思いました。せっかくの薀蓄を楽しめる設定が活かされていない気がしました。
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2015年07月27日

「犬の力」

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ドン・ウィンズロウ (Don Winslow) 著
東江 一紀 訳
角川書店 出版

 ニール・ケアリーを主人公とする探偵シリーズ(「砂漠で溺れるわけにはいかない」等)と同じ著者なのですが、趣がまったく異なります。深刻な状況をユーモアというオブラートに包むこともなく、息を詰めて成り行きを窺ってしまうような犯罪社会を描いています。主人公であるアート・ケラーは、麻薬を取り締まる捜査官として、狡猾かつ非情に麻薬や武器を商売にするバレーラ一家に戦いを挑みます。バレーラ一党は、政治家や警察官を抱きこんで思うままに操り、そして逃げ延び、双方にとってのひとつの結末を迎えるまでに三十年を要します。

 それだけのことを成すために、アートは部下を喪い、家族のもとを去り、孤独に耐えます。そしてその源となった力をこの作品では「犬の力」と呼んでいます。スケールの大きな作品ですし、アートやバレーラと関わりになったばかりに人生の歯車が狂った登場人物も数多く、それぞれが読み応えある描写なのですが、やはり息を詰めて読んでしまうので、ぐったりとしてしまいました。まさしく本を読んでいるあいだは別世界に行くことができる作品です。

2015年07月24日

「辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術」

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飯間 浩明 著
PHP研究所 出版

 三省堂国語辞典の編纂に携わっている著者が、日々どのようにことばを集め、それらに向き合っているかが、おぼろげながらわかってくる内容です。日本語を使いこなしていくうえで、著者なりに決めているルールがいくつか紹介されています。

<漢字と仮名の使い分けルール>

A. 「いつも文末に来ることば」「いつも文の最初に来ることば」は、基本的にひらがなで書く
たとえば、「〜事が出来る」ではなく「〜ことができる」、「〜様になる」ではなく「〜ようになる」という具合です。

B. 「むずかしい字」「みんなが読めないような字」は、できるだけひらがなで書く
たとえば、「繋がる」ではなく「つながる」と書くそうです。

 それでも迷うときは、漢字・仮名のいずれの表記がいいか示した、三省堂国語辞典のような辞書を使うという方法もあるそうです。どうやら、もともと当て字だった漢字などは、仮名で書いたほうがいいと記載されているようです。

<読点を打つルール>

1. 「出来事」と「出来事」の間に打つ
たとえば、
学校から帰ってから、彩ちゃんと渋谷へ映画を見に行ったが、つまらなかったので、途中で出てきて、カフェでずっと話していた。

2. 割り込んだ部分の直前に打つ
たとえば、
彩ちゃんが、フランスで修業したシェフのレストランに連れて行ってくれた。

2. は、読んでいる途中で、彩ちゃんがフランスで修業したかのように(読み手に)誤解させる心配がなくなるので、合理的なルールだと納得しました。1. のほうは、少し読点が多すぎる気がするのですが、このルールを読んだあとでは、どの読点を削るか悩みます。やはり出来事ごとに打つのは妥当なのでしょうか。
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2015年07月23日

「翻訳者の仕事部屋」

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深町 眞理子 著
筑摩書房 出版

 ミステリーを数多く翻訳されている著者だけに、アガサ・クリスティーやアーサー・コナン・ドイルなどの作品に対して、表面的に読んでいるわたしなどにはわからないことが指摘されてあり、楽しめました。たとえば、食事がまずいといわれるイングランドのロンドンに居を構えるシャーロック・ホームズですが、意外にも食にこだわりがあり、しかも作品には食事や食べ物の描写が結構あるそうです。4つの長篇と56の短篇で198カ所、一作平均3.3カ所もあるとか。コカインやモルヒネのような薬物しか印象に残っていませんでしたが、実際はかなりの料理が登場していて、その一部は詳細も紹介されています。意外でした。

 あと翻訳に関していえば、「フィネガンズ・ウェイク」や「不思議の国のアリス」をとりあげ、柳瀬尚紀の翻訳を賞賛されていました。実は、「フィネガンズ・ウェイク」は、以前読もうとしたときは、その面白みがまったく理解できず、すぐ放り出してしまったのですが、「ジョイスが『フィネガンズ・ウェイク』においてなそうとしたのは、みずからの造語−−ジョイス語ーーによって、意味の飽和状態をつくりだすこだったが、同時にまた、彼は音の復権をも意図していた。事実、これの翻訳にとりかかろうとしていたイタリア人のもとをわざわざ訪ねて、意味よりも音を大事にしてほしいと頼んでいる」という柳瀬氏の解説を読んで、いつかまた挑戦してみてもいいかなという気になりました。
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2015年07月09日

「ゾーンに入る技術」

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辻 秀一 著
フォレスト出版 出版

 著者の考え方が参考になると知人から勧められて読みました。知人は「ごきげんになるとパフォーマンスがあがる」と説明してくれたのですが、そのパフォーマンスと気分を関連付けることが目新しく感じられ、読んでみました。

 パフォーマンスを高めるには、集中することが重要ですが、その集中を妨げているのは認知脳だと説明しています。この認知脳は、過去の出来事から未来を予測するなど、わたしたちが日常的かつ反射的に使っているものです。過去の不首尾に終わったケースを思い出したりしたら、集中力を欠くことになります。

 そうならないためには、今だけを考える、あらゆる人やものごとに感謝する、自分も含め誰のことも応援するなどを実践すればよいと書かれてあります。

 納得できる部分が多いですし、実践して暗い気持ちになりそうなことは含まれていないので、知人の勧めにしたがって、常日頃心がけてみたいと思います。
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