2015年12月10日

「人形遣い」

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ライナー・レフラー (Rainer Löffler) 著
酒寄 進一 訳
東京創元社 出版

 事件分析官である主人公マルティン・アーベルは、「犯罪心理捜査官セバスチャン」の主人公に似たタイプです。一番の類似点は、仕事面では優秀ながら、強烈な個性を前面に出して人を寄せつけない雰囲気を醸しているところでしょうか。そのほか、身近な女性の影響を多大に受けて、変化していく過程も少し似ています。どちらの主人公も、フィクションの登場人物であるかぎり、破天荒で憎めない存在であるところが、作品を面白くしています。

 この作品を面白くしているもうひとつの要素は、犯人にたどり着くまでの展開です。主人公アーベルは、卓越した集中力と分析力を持っていますが、それでも窮地に陥ってしまいます。そして、そうなってしまう原因が読者には事前に明らかにされていて、存分にスリルを楽しめる構成になっています。そのいっぽうで、読者に対するミスリードも埋め込まれていて、何かがしっくりこないと感じながら読み進めることになってしまいます。

 グロテスクな犯罪が続くので、そういった描写が苦手な人には勧められない作品ですが、緻密な人物描写とよく練られたストーリー展開は、ミステリファンにとって読む価値ある作品だと思います。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする