2016年02月18日

「花散らしの雨」

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高田 郁 著
角川春樹事務所 出版

八朔の雪」に続く『みをつくしシリーズ』の第二弾です。「八朔の雪」では、澪が働く『つる家』は、付け火で焼けてしまいましたが、別の場所で心機一転、『つる家』を再開した澪たちに、またもや数々の難題が降りかかります。

 まず、「八朔の雪」で始まった名料理屋『登龍楼』が澪の料理を模倣する問題は、さらに悪質になってしまいますが、一旦の結着を見ます。しかも、かなり胸のすく展開でした。

 次に、澪のご近所さんであり、一緒に『つる家』で働くおりゅうの家族に災難が降りかかりますが、澪も芳もその苦労を分かち合って、江戸での暮らしに根が生えてきたような展開もありました。

 最後に、澪の恋がらみの話題も登場しました。

 短篇連作になっているこのシリーズ、それぞれで問題がもちあがり、眼が離せないだけでなく、その問題を解決する澪が堂に入っていて、小気味よく読めます。人気のあるシリーズのようですし、もう少し読んでみたいと思います。
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2016年02月17日

「八朔の雪」

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高田 郁 著
角川春樹事務所 出版

 子どものころに水害で両親を亡くして天涯孤独となり、大坂の料理屋の女将だった芳に勧められて女衆として奉公していたころ、そこの主人に味覚の鋭さを高く評価され、板場に入り料理人となったという江戸時代としては異色の経歴をもつ澪(みお)が主人公です。

 幸薄い澪は、両親を亡くしたあとも困難に見舞われ、料理屋が潰れてしまいひとりになった元女将の芳と一緒に江戸に暮らしています。

 そして江戸でも料理人として働く澪は、東西の味の違いに戸惑いながらも、果敢に新しい料理に挑戦し、それを軸にエピソードが展開されます。

 エピソードごとに登場する料理だけでなく、登場人物にもそれぞれの味があって、あっさりとした描写ながら、じんわりとした温もりを残す作品です。
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2016年02月13日

「ツリーハウス」

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角田 光代 著
文藝春秋 出版

 2011年の第22回伊藤整文学賞受賞作品です。

 主人公の良嗣(よしつぐ)は、特別な理由もなく仕事を辞め、祖父母や両親と一緒に暮らしています。

 ある日、祖父が静かに息をひきとり、残された祖母は、「帰りたい」ということばを漏らします。どこへ帰りたいのか? 良嗣から自然に生まれた疑問を端に、家族のルーツが明かされます。

 良嗣が祖父母や両親の過去を知るにつれ、わたしも母方の祖父がどう戦争を受けとめていたのか、高度成長期をどう思っていたのか、祖父が存命中に訊く機会があったら、何が聞けたのか想像してしまいました。

 そこには、時代が変わっても変わらない何かがあったのではないかと思います。良嗣が見つけられたものがあったように。
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2016年02月12日

「日本の大和言葉を美しく話す―こころが通じる和の表現」

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高橋 こうじ 著
東邦出版 出版

 このところ大和言葉が静かなブームなのか、関連書籍をよく見かけます。この本は、大手書店のレジ前で平積みになっていたので、つい読んでしまいました。

 仕事をするうえでは、一に外来語(ニュアンスをうまく伝えきれず、ついカタカナのまま)、二に漢語(堅い雰囲気を醸せるので、ついお手軽に)ときて、大和言葉を意識することはありませんでした。

 無駄に歳をとっているだけで、品がついてきていないわたしにとって、いつかこういうことばを使えたらと、いつまで待ってもこないであろう「いつか」を想ってしまうことばが並んでいます。

 せわしなさに負けて、なんでも「つい」で済ませてしまう日々を反省して、(この本を閉じた途端に、いつものせわしなさに戻るのだとしても)所作ひとつ、気遣いひとつに心をこめていきたいという心持ちになりました。大和言葉が注目を浴びている背景がわずかながら理解できた気がします。

「いつか」使ってみたいことばの一番は「お買い被りを」や「お戯れはもうそれぐらいで」といった謙遜のことば。そもそもお褒めいただける点がないので、「いつか」がさらに遠いことばです。
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2016年02月11日

「白いしるし」

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西 加奈子 著
新潮社 出版

 自分以外の恋人がいて、しかも、その恋人と別れられないのをわかっている男と関係をもってしまい苦しんだあれこれが綴られています。

 恋人がいることを知っていても、男の口から恋人とは別れられないと言われなければ前に進めない姿を認めて読むのは、なかなか辛いものです。しかも、そういう結末が読む側に伝わるよう冒頭から書かれてあり、明るい展開を期待することもできません。

 もし、同じような経験をしていたら、共感できた作品なのでしょうか。わたしは、いたたまれない重いムードしか感じられませんでした。
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