2016年03月12日

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

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村上 春樹 著
文藝春秋 出版

羊をめぐる冒険」とそれに続く「ダンス・ダンス・ダンス」が好きで、ついまた村上春樹の長篇を読んでしまいました。

 でも、わたしのなかの村上春樹ランキングのトップは「羊をめぐる冒険」と「ダンス・ダンス・ダンス」のままです。ファンタジーかどうかわかりませんが、現実感が薄いわりに日常のディティールが描きこまれている両作品に比べて、この多崎つくるの世界は、きわめて現実的で息がつまるほどの閉塞感を感じました。

 主人公の多崎つくるは、過去の苦しく辛い思い出と向き合うのですが、そういうことを避けたいと思う自分の傾向からして、なかなか読み進められませんでした。多崎つくるは、観察力や論理構成力があり、生真面目で、ものごとを真剣に受けとめるような、いわゆる堅いタイプなので、現実世界で同僚とするにはいい人なのですが、本のなかでわたしが出会いたいタイプではありませんでした。

 本を開いているあいだは解放されたいとか、楽しい気分に浸りたいというときには、向かない本だと思います。