2016年04月05日

「ゆうじょこう」

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村田 喜代子 著
新潮社 出版

 数えで15の女の子が明治38年の春に熊本の遊郭に売られてきてからの2年足らずを描いた作品です。イチという名のその女の子は、廓のなかにある学校で、女性教員である鐵子さんに宛てて日記のようなものを書きます。作品の軸となっているそのイチの手紙のような日記は、イチが見聞きして感じたこと、やり場のない怒りや悲しみなどがお国訛りで綴られています。

 読む側の鐵子さんも、かつて廓に売られてきた身だからか、イチの気持ちを理解しながらも、口を出すことなく静かにイチを見守ります。イチの感じる辛さや切なさを知り尽くしているのでしょう。

 アメリカの農園を支えた奴隷制度も、人が人を売り買いする悲しい仕組みでしたが、親が自身が生き延びるために子を苦界に売り飛ばす世の仕組みは、さらに切なく感じられました。

 帰る家さえも失ったそんな状況にありながら、イチが考えることをやめなかった結末に、ほんの少し救われました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする