2016年12月08日

「緑のカプセルの謎」

緑のカプセルの謎.png

ジョン・ディクスン・カー (John Dickson Carr) 著
三角 和代 訳
東京創元社 出版

 1939年に発表されたミステリだとは俄かに信じがたいほど、色褪せた感じがしません。現代のデジカメには遠くおよばない、音声すら入っていない映像が重要な証拠なので、もちろん作品の古さを実感することはできます。それでも、ひとが陥りやすい錯覚を利用したトリックは、妙に説得力があります。わたしが、もしこんなふうに誘導されたら、うまうまと罠に嵌められることは間違いないと言い切れるほどです。

 見事なトリックで成り立つその事件は、ある事件のトリックを解明するために実施された実験を巧みに利用したものでした。しかし、その実験の意図がどこにあったのかも、どのようにその実験が利用されたのかも、皆目見当がつかないところから、ヒントが小出しにされていきます。そんな展開のなか、途中で読むのをやめるなんてことはできず、ついつい読んでしまいました。

 そしてすべてが明らかになり、ずいぶんと巧妙なトリックだとひとしきり感心したあと初めて、少々偶然に頼りすぎた展開があったことに気づくといったありさまで、すっかり騙されてしまいました。発表から半世紀以上経って、新訳で再登場する作品だけのことはあります。堪能いたしました。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする