2018年09月21日

「The Green Mile」

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Stephen King 著

 Stephen King の本は、著者名がタイトルの数倍大きく書かれているのが一般的です。それだけ、読者の期待を裏切らない作家だということなのでしょう。

 この作品もそうでした。最後の最後まで気になる謎が残り、それが明かされるまで読んでしまいました。もちろん、この作品の魅力は、伏線とその回収といった構成だけではありません。それぞれの登場人物を通して見える人生の現実に共感したり、学んだりする点が多くありました。

 この作品には、常識を超えた力をもつ人物が登場しますが、その非現実性を超える圧倒的なリアリティを感じました。誰も持たない能力を持つ人が活躍してハッピーエンドを迎えると、そんなことは起こりえないと根拠もなく思ってしまいますが、特殊な能力の代償があまりに大きいと、なぜか現実的に見えてしまいます。

 リアリティとは『割り切れないもの』と言い換えられるのかもしれません。表裏一体の関係にあるものごとの表側しか見ないのではなく、この小説の主人公が語るような裏側も描かれると、一気にリアリティが増すように思えました。

 そのリアリティのなかに人生の哲学を見た気がします。
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2018年09月12日

「無趣味のすすめ」

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村上 龍 著
幻冬舎 出版

 著者個人の価値観が前面に出ているエッセイ集です。世の流れなどを忖度せず、自分の考えを表明している点に好感がもてました。

 そのきっぱりとした物言いに対し、受け入れられないと思ったり、なるほどと納得したり、さまざまな反応が起こる自分を見て、自らの価値観を再認識することができたと思います。

 共感できたことばを抜き出してみました。
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理想的なビジネスパートナーというのは、「その人がいなければやっていけない」ということではない。(中略) 一人でも充分にやっていける人同士が信頼とビジョンを共有することで、初めて理想的なパートナーとしての一歩を踏み出すことができるのだ。
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 ビジネスパートナーに限らず、パートナー全般に当てはまることだと思いました。
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読書というのは、必要に応じてすればいいもので、親や教師や上司に勧められて本を手に取ってもあまり意味がないし、また読書をすればそれでOKというものでもない。(中略) 読書が重要なのではない。情報に飢えるということが重要なのだ。
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 日々本を読むなかで、どうして自分が本を読むのかわかっていませんでした。情報に飢えているという自覚があるから本を読み続けているように思えました。

 同意できない内容であっても、著者の意見がすんなりと伝わってきたのは、さすが売れる本を書き続けている作家だと思います。
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2018年09月11日

「数式を使わないデータマイニング入門」

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岡嶋 裕史 著
光文社 出版

 データマイニングを日常的に使っていることばだけで説明している点と手法だけでなく活用場面等を含め広く浅く説明している点で参考になりました。

 たとえばクラスター分析ひとつとっても、『重点』ということばすら使っていません。しかも、k-平均法 (k-means method) だけを、4 つのクラスタにわける例を次のような図で説明しています。

 まず、モビルスーツの分布があります。(モビルスーツが何かはわからなくても問題ありません。)
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 4 つのクラスタそれぞれの中心点を設定します。
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 次に、プロットされた情報をそれぞれ一番近い中心点に割り振ります。
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 その結果、それぞれの情報が属するクラスタが仮に決まります。
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 仮のクラスタそれぞれの中心点がどこにあるか再計算します。
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 中心点が移動したクラスタがあった場合、もう一度、それぞれの情報を一番近い中心点に割り振り、どのクラスタに含まれるのか判断しなおします。この手順を中心点が移動しなくなるまで繰り返します。
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 最終的には、中心点が移動しない安定した形が得られます。
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 k-平均法のクラスター数をどう設定していくかという話を飛ばして、クラスター数は 4 となっています。

 わたしのように何となくわかった気になっているだけだと、ここまでバッサリと情報を落としていけないので、見習いたいと思いました。
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2018年09月10日

「ココロの止まり木」

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河合 隼雄 著
朝日新聞社 出版

 身近な話題をタネに、著者の多岐にわたる活動や臨床心理学者としての博識が披露されていますが、押しつけがましさがありません。

 印象に残ったのは、日本の神話と精神に関する話題です。

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 日本神話の全体としての特徴は、「均衡」ということであろう。ふたつの対立する力のどちらかが勝ち、どちらかが敗れる、というのではなく、ふたつの力が均衡し共存する。これは世界の神話のなかでも珍しいと言ってよく、示唆するところの大きいことである。
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 また、こうもいってます。

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 日本神話の中心にいる神は、名前があるだけでまったく何もしない。「空」の状態なのである。ところが全体として見ると、多くの神々が反発したり、協調したりしながらも、うまくバランスをとって全体構造をつくりあげている。
 どれかが強くなって中心を占めそうになると、それに対抗したり、揺り戻そうとする力が生じて、結局はうまく中空均衡の状態に戻される。これが実に巧妙に行われるところに、日本神話の特徴がある。
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 この「中空均衡構造」は、日本人の特性を考えるうえでヒントを与えてくれると著者は、書いたうえで、比較対象に「原理中心統合構造」をあげています。

「原理中心統合構造」とは、一神教の神のような絶対的な存在が中心にいて、明確な原理を示し、力を持っていて、全体はそれによって統合されていると説明されています。

 もし日本にトランプ大統領のような党首があらわれたら……、もしアメリカ政治に日本の与党と野党のような足の引っ張り合いが持ち込まれたら……。いろいろな『もし』が思い浮かびましたが、スピードが求められる現代においては、日本人も「中空均衡構造」の一部を壊して、「原理中心統合構造」を取り入れる余地をつくるべきかもしれません。
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