2018年09月28日

「天国通り殺人事件」

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シュテファン・スルペツキ (Stefan Slupetzky) 著
北川 和代 訳
東京創元社 出版

 オーストリアの作家による作品です。普段オーストリアの作品を読む機会が少ないので、期待して読んだのですが、2 つの点で物足りなさを感じました。

 ひとつは、人物描写が少ない点です。主人公ですら、価値観や信念のような内面も過去も描かれていないため、人間らしさに欠けて見えます。

 もうひとつは、中途半端な位置づけの作品だという点です。

 最初に殺人事件が起こり、主人公が犯人に取り違えられるような状況に陥ります。次に主人公は、自身が犯人ではないことを証明すべく真犯人を見つけだすために行動を起こします。ここまでの展開は、コージーミステリのお決まりパターンですが、コージーミステリの素人探偵のような微笑ましさは感じられません。肝心の主人公が元刑事という設定で、素人探偵役には無理があり、また彼の行き当たりばったりな行動が笑いを誘うユーモラスな展開ともいいがたいものがあります。

 では、ミステリとして謎解きを楽しめるかというと、それも難しいように思いました。素人の読者にもわかるような手がかりがないだけでなく、元刑事が探偵役になっているわりには推理も展開されません。

 このシリーズは、すでに 4 作品刊行されていて、本作は、ブルグドルファー・ミステリ大賞を受賞しているそうです。ユーモア (どちらかといえばブラックユーモア) が売りの作品かもしれませんが、日本語にした時点で失われたのかもしれませんし、オーストリアの文化やウィーン語に疎いわたしには伝わらないものだったのかもしれません。でも、わたしには合わない作品でした。
posted by 作楽 at 05:00| Comment(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする