2018年10月24日

「美しい星」

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三島 由紀夫 著
新潮社 出版

 自身は火星からきた宇宙人であるという意識に突然目覚めた父親、同様に木星からきたとさとった母親、水星からきたという長男、金星からきたというその妹という顔ぶれの 4 人家族と、白鳥座 61 番星の未知の惑星からきた宇宙人だと名乗る万年助教授とその取巻きふたりのグループが対照的に描かれています。

 なぜ純文学作家が宇宙人を描くのか、理解に苦しむまま読み進めると、4 人家族の父親と助教授が地球人 (人間) について意見を戦わせる場面になります。両者は、人間と自らを切り離して考えている点も人間を不完全な存在として見ている点も全く同じなのですが、前者は人間に平和を与えて救おうと懸命になり、後者は人間を滅ぼそうと躍起になり、目指すところは正反対でした。

 両者の議論において描写された人間の本質は、作家の思想の投影であり、この作品の読みどころでもあります。この場面を読むと、これらの登場人物は、人間を外から見る存在として宇宙人である必要があったのかと納得しかかったものの、そのあとの結末を読むと、その解釈も自信がなくなりました。

 なんとなく宗教における『救い』のように見えた結末は、人間の平和を憂ういっぽうで自らはガンに身体を蝕まれ余命宣告に打ちひしがれる父親にしろ、自らを低く評価する周囲の人間に憎しみを抱き人類の滅亡を願っている助教授にしろ、あまりにも俗っぽい登場人物と相容れないように見えました。あるいは、俗っぽい普通の人たちだからこそ、あの結末だったのでしょうか。すっきりとしない読後感でした。
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2018年10月23日

「ふふふ」

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 作家だけに幅広い分野に及ぶエッセイです。いろんな笑いをテーマにしていますが、遅筆で有名な作家としての自嘲が、鮮やかでした。

 アメリカでは『後援者募集 (バッカーズ・オーディション)』というものがあるそうです。演劇などの後援者を募集するもので、製作者が中心となって劇作家、作曲家、振付師、出演者などがいかに魅力的な企画かを後援 (投資) 候補者に説明し、資金を調達するのです。演劇があたれば、後援者には分配金が支払われます。似た仕組みで、エンターテインメントを証券化し、資金調達する場合もあります。

 著者は、自らの劇団でも証券化手法で資金を調達できないかと考えますが、相談した金融アナリストからは相手にされず、こう説明されます。
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「証券化の際の契約書を取り寄せて調べてみたところ、どんな契約書にも次の一条が書かれているんですね。それはこうです。映画、演劇の私募債については、発行の時点で必ず脚本の完成稿ができていることを必須の条件とする」
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 見事な自虐ネタです。

 もうひとつ、日本人としての自嘲も、印象に残りました。

 ボローニャという街の憲章は、『わたしたちは、この場所で、同一の法のもとに豊かな共同生活を送ることを互いに求め合う』というもので、この街では、ホームレスになっても生活を立て直すための仕組みがあるそうです。

 互いに人を人らしく再生させようと努力するこのような街に対し、著者は日本を互いに人からカネを巻き上げようと躍起になっている街と評しています。

『貧困ビジネス』などといういうことばを生んだわたしたちを 2005 年初出のエッセイですでに予見していたようです。
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