2018年12月05日

「ちょっと気のきいた大人のたしなみ」

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下重 暁子 著
青萠堂 出版

 著者は、こう書いています。

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 野球のイチロー選手やサッカーのかつての中田選手がなぜ美しいのか。決して人におもねらず自分に厳しいからだ。自分なりの美学を持って、規律をつらくとも守っているからだ。
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 著者も、読者におもねることなく『大人』としての矜持、おしゃれ、気遣いなど多岐にわたって語っています。時代が違うとか、時間がないとか、そういう読者の反論も想定したうえで自分の考えをきっぱり書いている点は好感がもてます。

 ただ、見習いたいと思ったものはそう多くはありませんでした。一番わたしに響いたのは、次です。

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 強いとき、好調なときは、人ははげましを必要としない。失意のとき、弱いときに力になってくれるものこそ大切なのだ。はげましてくれた人の心こそ本物なのだ。好調なときは、そばにいなくとも、失意のとき、不調のとき、見守っている温かい目を持ちたいものだ。
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 人が落ち目になると見るや否や去っていく人の多い今の時代こそ、わたしもこうありたいと強く思いました。
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2018年12月04日

「ステップ」

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重松 清 著
中央公論新社 出版

 主人公の男性が、妻に 30 歳という若さで死なれたあと、ひとりで娘を育てた約 10 年の道のりが描かれています。娘は 1 歳半で母を亡くし、その思い出もなく父親とふたり暮らしです。母のことを知りたいと切望する娘と父親が向き合う場面など、切なくなる描写が続きます。

 悲しく辛い境遇が描かれているとはいえ、登場人物がみな『いい人』ばかりで、娘の成長など希望ももてる物語です。

 生きていくうえで『受け容れて前に進む』ことの大切さが滲みでた小説であるいっぽう、少し現実味に欠けているように感じられました。
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2018年12月03日

「20 歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」

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ティナ・シーリング (Tina Seeling) 著
高遠 裕子 訳
CCC メディアハウス 出版

『普通〜するでしょ』とか『それ常識でしょ』とか普段何気なく聞くことばですが、この本を読んで、もっと『普通』とか『常識』を疑ってもいいと思えました。

 著者は『My Dinner with Andre (アンドレとの夕食)』から、ニューヨーカーについて述べた以下のセリフを引用しています。

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「看守でもあり、囚人でもある。そのため、……自分たちがつくりあげた監獄を出られないし、監獄だと気づくことすらできない」
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 つまり人は、自ら周囲に檻をつくり、そこから出られない言い訳をし、囚われ続けているというのです。この檻を出ることを決め、檻の外にある無限のチャンスを掴みにいけば、すべてが変わるということを若いときに知ってほしいというのが、この本の主旨です。

 しかし自らの檻から出ていくことは、誰にとっても難しいことで、それを乗り越えた実例を著者はこの本で数多く披露しています。

 そのいっぽう解説で、三ツ松新氏は次のように書いています。

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諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授によれば、遺伝子的に、ドーパミン第四受容体の遺伝子内塩基の繰り返しが多いほど「新奇探索傾向」が強く、セロトニンが少ないと「損害回避傾向」が強まるそうです。ちなみにある調査では、新奇探索傾向の強い日本人が 7% であるのに対してアメリカ人は 40%、損害回避傾向の強いアメリカ人が 40% であるのに対して日本人はなんと 98% だったそうです。
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 ここからいえることは、遺伝子が異なる人たちと同じ条件でブレイクスルーを競うのはリスクが大きいということです。ただどんなときでも相手の思考と傾向を知っておくことは大切だと思います。
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2018年12月02日

「こんな女でごめんあそばせ」

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蝶々 著
マガジンハウス 出版

 著者は、かつて会社員として働いていたころ、銀座のホステスにならないかと度々路上で勧誘を受けて夜は銀座で働くようになり、文筆業へと転身したようです。

 すごいなあ……と、口をぽっかり開けてしまうようなスケールの大きさです。たとえば金銭感覚については、こう書かれています。

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チップやタクシー代で 1 万円もらうのは、「あら、どうも」ってスルーなかんじで、10 万円でやや個人的な好意が伝わり「わーい」、封筒入りの 30 万円超えで「ありがとー」と言いつつ、ようやく下心を警戒しだし、100 万円超えると逃げが打ちづらくなるので、かんじよく辞退する (プレゼント価格もこれに準ずる)。
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 ただ、自分は自分、他人は他人ときちんと区別しているだけで、いわゆる薄給で働くような会社員のことを何も知らないわけでも関係ないと思っているわけでもありません。それどころか、そういう人たちにも役に立つものを書きたいと考えているように見受けられます。そういう懐の深さというか人間味に溢れていることと、破天荒に見えるほど人生を楽しんでいることが、彼女のなかで共存しているようです。

 読むと、笑ったり考えさせられたり驚いたり忙しくなるだけでなく、自分の日常とあまりにかけ離れていて、それをちらりとも思い出さないので、ストレス逃れに最適でした。
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2018年12月01日

「東京少女」

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七重 俊 著
アメーバブックス 出版

 表紙が気に入って手にし、2 ちゃんねるから書籍化された本を期せずして初めて読むことになりました。途中、レスの内容について著者が触れるまでそうとは気づかなかったくらいなので、本のかたちに編集されていれば、2 ちゃんねるは苦手でも抵抗なく読めるというのは発見でした。ただ、やはりフィクションとしての評価は考えられないとも思いました。

 ある社会人男性が、クリスマスの夜を一緒に過ごしてくれる 10 代の女性を買ったところから始まり、ふたりの関係を振り返るかたちで男性は 2 ちゃんねるに書きこんだようです。

 リアリティはありますし、先の展開も気になります。でも、そこに話したいという欲求はあっても、読者の視点というものは最初からないように思います。また描写も読者に伝えることを主眼としていないように感じられました。

 自分にも似たような経験ができるかもしれないといった感覚、あるいは友達の話を聞いている感覚を味わうのにはいいかもしれませんが、作品として見るのは厳しいように思います。
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