2019年01月31日

「出世する人の英語 出世する人の英語 アメリカ人の論理と思考習慣」

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小林 真美 著
幻冬舎 出版

 IT 業界で働いていますが、IT 業界でアメリカが先頭に立ったのは、言語面での優位性が最大の要因だと思っていました。(英語は、漢字を使う言語よりずっと文字数が少なく、母語とする人々の人口も多いからです。)

 でもこの本で『アメリカ人が最重要視する Integrity』 の項を読み、本当に Integrity を最重要視する人がトップに立ち、社員を選び育てるものさしに Integrity を用いているのなら、アメリカが IT 業界のトップに立つのは当然だと思いました。

 Integrity は、「言動が一致している」「一本筋が通っている」と説明され、ニュアンスとしては「どんなときでも、だれも見ていなくても、正しい判断や正しい行いができる強い姿勢」と書かれてあります。それは仕事の場において「上司がなんと言おうが、会社の体制がどうであろうが、自分が正しいと信じる行動ができる」ということだそうです。

 Integrity ほどの衝撃を受けませんでしたが、そのほかにも収穫がありました。

◎ I'm happy for you.

相手を褒める状況で「すごいね!」に相当する表現だそうです。これは使えそうです。

◎ Do you have any ideas? (何か意見はありますか?)
◎ Do you have any idea? (あなた、わかっているの?)

◎ I have no ideas. (よい考えが浮かびません)
◎ I have no idea. (わかりません)

 日本語では名詞の単複をあまり気にしないので、これらの差には気をつけるべきだと思いました。特に、I have no idea.は、投げやりな感じがするそうなので、注意が必要です。
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2019年01月30日

「女も、不況?」

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酒井 順子 著
講談社 出版

 著書「負け犬の遠吠え」で自身を含む『30 代、独身、子どもなしの女性』を『負け犬』と呼んだ方なので、ひとの感情を読みとることに長けていて、なるほどと思える点が見つかりました。

 そこまで時代は変わったのか……と思ったのは『トロフィー・ハズバンド』。妙齢女性が若い男の子と結婚する姿を見て、甘え上手と甘えさせ上手の釣り合いはしっかり取れていて、うまくいく組み合わせかもしれないと評しています。『トロフィー・ワイフ』の逆バージョンがいよいよ定着するのかもしれません。

 あとは、直視しづらい心の動きについて 2 点。ひとつは『食にこだわるお店』。こだわりのコーヒー店やこだわりの蕎麦店を見て著者は、次のように解釈しています。

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IT とかグローバルとかイノベーションとか、何だかやたらと複雑な世の中において、ひたすらコーヒー豆を選り分けるとか、蕎麦を均等に延ばすとか、小麦粉を練るといった「作業」に、彼等は救いを求めるのではないか。自分の肉体と味覚だけで勝負ができる仕事に、安寧の地を見ているのではないかと思うのです。
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 大きな価値を生みだす何かが目に見えないものに移行していき、個人の役割に格差が広がる現代、著者の解釈はもっともだと思います。

 もうひとつはややこれに似た反応で、リーマンショックの時期に見られた『外資系金融企業の危機を見てウキウキした』人たちの反応です。莫大な利益を生みだしていた金融企業とそのなかで贅沢を謳歌していた従業員の転落を著者は『他人の不幸は蜜の味』と捉えています。(その感覚は日本固有のものではなく、ドイツ語にも『シャーデンフロイデ』という似た表現があると著者は紹介し、ウキウキした人たちを否定していません。)

 転落前の金融企業に本当にそれほどの経済的価値があったか見えづらかったことが、この転落にウキウキした人を多く生みだしたような気がしてなりません。目に見えないものの価値が急速に伸びていくこの時代の変化についていく大変さをあらためて感じました。
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2019年01月19日

「永遠の 0 (ゼロ)」

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百田 尚樹 著
講談社 出版

 タイトルのゼロは、第二次世界大戦時の零戦 (正式名称は三菱零式艦上戦闘機) のゼロを意味しますが、それ以外にも特攻の帰還率ゼロ (十死零生) の意味も含まれているように思います。

 グローバル時代のいま、日本の文化や日本人の特性を実感する日々ですが、第二次世界大戦時代のこの小説を読んで思うのは、日本人はこの時代からあまり変わっていないのかもしれないということです。

 この作品では、ある姉と弟が特攻隊員として亡くなった祖父を知る人たちを訪ね当時の話を聴くかたちで、戦争やその時代の価値観が明らかにされます。命を賭した特攻さえ、歴然とした戦力差がある敵の目標物まで到達することは不可能で、無情にも結果を出せないことは自明だったことがわかります。

『失われた 10 年』とか『失われた 20 年』とかいわれだしてから、不正を謝罪する会見があとを絶たない気がします。それも、納期や予算だけでなくあらゆる無茶が底辺に押しつけられ、それらを表面上だけでもクリアしようと底辺が仕方なく不正に手を染めたりするケースが増えたように思います。つまり、かつては『お国のために命』を差し出していた底辺の人々がいまは『会社のために良心』を差し出しているようにも見えたわけです。

 特攻隊員だった祖父が結果的に『お国のために命』を差し出したかたちになっても、彼なりのささやかな抵抗を試み矜持を保って亡くなった道のりが、もしかしたら読者の共感を呼んでこの本がベストセラーになったのかもしれません。
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2019年01月18日

「NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生」

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ビル・キルデイ (Bill Kilday) 著
大熊 希美 訳
TAC 出版 出版

 グーグルマップの元となった製品の誕生 (2001 年のトレードショーで披露されたのが初イベントとなったキーホールアースビューアーという名前の製品) し、それが 2004 年秋にグーグルによって買収されたあと 2005 年 2 月にグーグルマップ (アメリカ国内の地図だけでローンチし、1 か月ほど経ってグーグルローカルに改名) として公開され、2005 年 6 月にはグーグルアースもリリースされ、その後発展し続けた 10年ほどの経緯が描かれています。

 この本には 15 年を超える歳月が収まっていますが、1 冊の本で変化のはやい IT 業界の製品も企業 (つまり人) も広く振り返るには長すぎる期間に思います。さらに、IT 業界に身をおいているわたしの目から見ると、ベンチャー企業が資金繰りで苦労したり、M&A によって異なる企業文化がぶつかったり社内政治で覇権争いがあったりといったことに目新しさを感じられず、冗長に感じました。

 だったら、もっとグーグルマップという製品だけに焦点をあて、機能や技術・開発手法の変遷に絞ったほうがおもしろかったのではないかと思います。著者は、キーホールアースビューアー時代とグーグルマップ時代の一部で、プロダクトマネージャとマーケティングマネージャを兼任していたので、アーキテクチャに疎い人々にも製品の仕組みや特徴をわかりやすく説明できたと思います。

 もしこの本がグーグルアースのリリース直後あたりにそれまでの裏話満載で出版されていれば別ですが、2018 年という出版時期を考えると、取りあげる範囲にもう少し工夫が必要だった気がします。

 そうはいっても、グーグルマップの成長物語としての部分は読みごたえがあり、そういえばそうだったと過去を振り返る機会を得たと同時に、グーグルの価値観やビジネス理論、ファウンダーたちの世界を変えるブレイクスルーを生む信念・信条を再認識できたことは有意義でした。
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2019年01月08日

「ホビット―ゆきてかえりし物語」

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J・R・R・トールキン (J.R.R. Tolkien) 著
ダグラス・A・アンダーソン (Douglas A. Anderson) 注
山本 史郎 訳
原書房 出版

 古典のすごさを見せつけられたように思います。

 この本の後半に収められている膨大な量の注を見ると、「ホビット」の舞台である『ミドルアース (Middle-earth)』やその登場人物などがいかに幅広く詳細に研究されているかがわかります。また、作家が納得できるかたちに向けて作品が何度も修正され版を重ねていったことも窺えます。続編の「指輪物語」との整合性がとられたり、両作品の舞台や登場人物を精緻に思い描こうと繰り返し読んだ読者が疑問に思ったりしたことが反映されたりしたのでしょう。

 この作品は、舞台も登場人物の個性もストーリー展開も魅力的なのですが、わたしが惹かれたのは、その意外性です。

 ひとつは、何に重きをおくかということです。まがまがしいドラゴンが登場するのですが、それを退治する場面はクライマックスではありません。また主人公がドラゴンを倒すわけでもありません。主人公はホビットという種族のビルボ・バギンズなのですが、冒険の旅において数々の活躍を果たすものの、いちばん人に印象を残すおこないは自己を犠牲にするある判断で、寓話らしさを感じない冒険物語に人の叡智と品性を感じさせます。

 もうひとつは、日常との融和です。タイトルに『ゆきてかえりし』とあるように、冒険に行くまでの平凡な生活と冒険から帰ってからの幸福な暮らしがうまく冒険の旅とつながっています。ビルボは、冒険の旅に出る際もハンカチを忘れてきてしまったことを気にかけるような性格で、戦闘的になることもなく、またユーモアを忘れることもなく、冒険に出たことを少しばかり後悔してしまう場面もあり、颯爽とした正義の味方とは違う持ち味を損なうことなく冒険を終えます。

 そんなビルボに親近感を感じたり、冒険前後の彼の暮らしに自分の日常を重ね合わせることができるようになっているように思います。

 おとなが夢中になるのも納得できました。
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