2008年07月22日

「蟹工船・党生活者」

20080722[KaniKosen].jpg

小林 多喜二 著
新潮社 出版

 現代のワーキングプアに通じるものがある、というで、「蟹工船」が売れているそうです。でも、わたしには「蟹工船」とワーキングプアを結びつけることができませんでした。「蟹工船」を読んでわからなかったのではなく、たぶん、現代のワーキングプアを理解できていないのだと思います。

 労働三権と呼ばれる、団結する権利、団体交渉をおこなう権利、団体行動をおこなう権利が認められている現代の労働者が「蟹工船」の労働者と同じわけがありません。しかし、パートや派遣社員といわれる立場では、現実的には労働三権がないのにも等しいのでしょうか。そういう面はあるのかもしれませんが、蟹工船と違って、安全は保障されていると思います。わたしが、現実も知らず、そう思いたいだけなのかもしれませんが。

 あるブログの「蟹工船」の話題で、テレビ番組のコメンテーターが「ときには、他人の不幸な話で自分を慰めることも必要なのではないか?」と遠慮がちに発言していた、と紹介されていました。そういう目的で、「蟹工船」が売れているのかもしれませんが、それはそれで悲しい気がします。

 昔、「蟹工船」を読みながら、日本にもこういう時代があって、こういう小説を書いた人が警察で拷問を受けて亡くなったんだ、と思ったわたしにとって、この本がこういうかたちで売れるようになるのは、寂しい気がします。

 学校で労働三権について習い、メーデーには会社員をしていた父が家に居るのが当たり前だった子ども時代を経て、わたしは自分も会社員になり、労働組合の活動に参加するようになりました。でも、いろいろ交渉して会社を変えていくより、違う会社に属したほうが手っ取り早い気がして、結局転職しました。そんなわたしには、何もわからないのかな、と今「蟹工船」を読み直して思います。

 「党生活者」では、ある工場に潜入した共産主義者が、本工と呼ばれる正社員と臨時工と呼ばれるアルバイトの待遇差を指摘しようとします。しかし、臨時工自身は、本工になれる可能性があるという工場側にとって都合のいい噂に流され、無理なサービス残業に応えます。「これが現代なら、よその工場の社員になればいい話なんだけど」と思ってしまうわたしは、アルバイトという立場をわかっていないのかもしれません。

 日本の中にどっぷりと浸かって生活しているのに、わたしは身近なことが全然見えていないのか、と落胆してしまいました。
posted by 作楽 at 00:21| Comment(0) | TrackBack(1) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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