2008年09月05日

「ギリシア神話を知っていますか」

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阿刀田 高 著
新潮社 出版

 「神話の心理学」でも書いたのですが、神話がよくわかりません。なので、「旧約聖書を知っていますか」、「新約聖書を知っていますか」に続いて、同シリーズの「ギリシア神話を知っていますか」も読んでみました。

 ギリシャ神話と言われて、私が一番に思い出すのは、「オイディプス王」。大学で、一般教養の人文科学の授業で読まされました。まさしく「読まされた」という表現が似合う物語です。読むだけなら、予言や運命、親子関係などに思いをめぐらせるだけなので、「おもしろい展開だ」で済みます。しかし、授業ですからレポートを提出しなければなりません。何よりも大変だったのは、一般教養科目でわたしがレポートを書けるレベルとギリシア神話のスケールの違いです。苦しかった思い出です。

 しかし、こう振り返ってみて思うのは、よくこれだけのものが出来上がったな、ということです。この本の説明によると、ギリシャ神話の成り立ちはこうです。
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 ギリシア神話の主要な部分はすでに先史時代に作られていたと推定されている。紀元前三千年頃から地中海のクレタ島を中心にして、いわゆるクレタ文明が繁栄し、これがギリシア本土にも影響を与えた。やがて北方からアカイア人が侵入して来て、ミケネー文化を創る。さらに紀元前千年頃にドリス人が南下して来てギリシアを征服する。こうした諸民族の混合の中から生成発展淘汰された伝説群が、現在に残るギリシア神話である。
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 人間が身にまとうものではなく、人そのもの、特にその内面を直視しなければならない内容になっているのも、その古さを考えると納得できます。

 しかし、オイディプスひとつを例にとっても、予言がすべて的中したり、母と息子が男女として交わったり、現実味があまりありません。神話に向き合って思うのは、「もし、現実にそういうことがあったとしたら」「もし、わたしがオイディプスの立場だったら」という仮定です。

 しかし、神話を実話と真剣に受け取った子どもがいました。今回、この本を読んで一番わたしが感動したのは、その子どもの話でした。

 その子どもとは、ハインリッヒ・シュリーマン。7歳のときに牧師である父親からトロイア戦争の話をきき感動した彼は、実話だと信じ込み、負けたトロイア方に同情して涙まで流したということです。そして、いつかそのトロイアの城を見つけると決意します。

 勤勉な彼は、遺跡発見のために財を成し、いよいよ発掘に着手します。そこで彼が見当をつけた場所は、従来の考え方に囚われず、ホメロスの物語に沿ったものでした。
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 彼は"イリアス物語"の細かい詩句を思い出したにちがいない。ギリシア軍は海岸に陣営を張っていた。トロイア軍は当然丘の上にいた。両軍の間でたびたびおこなわれた使者の往復、戦場における進退の情況、おただいに敵の陣営の松明が見えたこと・・・・・・などなどから推察して、海岸から直線距離で八キロ、ギリシア軍の陣営があったとおぼしきあたりから十五キロもあるピナルバシの丘は遠過ぎる。また、ピナルバシの丘は巨大過ぎて「アキレスがヘクトルを追って城壁をぐるぐると三度も廻った」という記述にもそぐわない。
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 結果、その推測は当たっていた。しかし、信念というか何というか、発掘を始めて最初の2年はそれらしい遺跡を見つけられずにいても、神話を信じ掘り進めた彼のすごさに感動しました。

 しかし、そうなると、神話のどこまでが真実でどこからが空想か、気になるものです。
posted by 作楽 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(宗教・神話) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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