2008年09月11日

「The Logic of Life: The Rational Economics of an Irrational World」

20080911[TheLogicOfLife].jpg

Tim Harford 著
Random House 出版

 「ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?」という本をもう3年以上も前に読みました。印象に残った内容に、人事採用担当者は、優秀な人材を選ぶことではなく、問題のある人間を選ばないことを考えている、ということでした。米国の場合、問題が起これば、日本に比べて裁判沙汰になりやすく、補償に関しても企業の財力が大きく影響する傾向がある(補償内容が同じでも、財力がある企業が補償する場合とそうでない企業が補償する場合では、金額面が何桁も異なることがある)ため、当然といえば当然なのですが、いつも採用される側に立っていると、つい忘れがちな視点です。

 米国では特定のポジションを想定しての採用が一般的です。広告や人材会社の管理などは人事部が一括でしてくれますが、最終的には、必要とされるポジションの上長に当たる人が責任を持ちます。結果、足きりのような筆記テストや面接を人事部が実施しても、該当ポジションの上長あるいは上長が選んだ人間が面接することになります。そのようにして採用した人間が会社に害ある人間だった場合、面接したのは誰だ、ということになりそうです。一方、特別優秀な人間がいても、面接したのは誰だ、とはならないような気がします。そう考えると、無難な選択になるのではないでしょうか。

 そして、ここからがこの本の内容です。人種差別がなくならない仕組みについて説明されています。ある実験がもとになっています。実験参加者はヴァージニア大学の学生です。学生たちは、雇用者と労働者に分けられます。労働者は、無作為に"緑色"と"紫色"に分けられます。そして、次のような手順が繰り返されます。

1.労働者は、費用をかけて、教育を受けるかどうかを選択します。(教育を受けた場合、テストで高い点数を取得できる確率が高まります。)
2.採用テストが実施されます。教育の有無で確率は変わりますが、テストの点数はさいころで決まります。
3.各雇用者は、テスト結果だけを見て、それぞれを採用するかどうかを決定します。
4.雇用者は、教育を受けた者を採用した場合、数ドルの報酬があります。教育を受けていない者を採用した場合、数ドルの罰金があります。一方、労働者は、採用された場合、報酬が得られます。罰金はありませんが、1.で教育を受けた場合、費用がかかっています。

 問題は、情報の開示です。手順の2巡目以降は、色別のテスト点数と採用結果平均が知らされます。これにより、1巡目の結果によって、手順を20回繰り返したときには明確な色別の傾向が生まれます。つまり、まったく情報がなかった状態で決まった色別の上下が開いていきます。1巡目で、"緑色"に当たった学生のほうがより多く教育を受けたと仮定しましょう。そうすると、2巡目以降、労働者が教育を受ける際、採用される可能性の高いほうの色、つまり"緑色"が当たれば、教育に費用を払う傾向が顕著になります。一方、雇用者は、過去のテスト結果平均が高い傾向にある色、つまり"緑色"のほうを選ぶようになります。

 言うまでもなく、この1巡目に上位になった色とは白人のことを指しています。

 無難な採用をするということは、白人を採用するということに傾いたままなのでしょうか。日本の場合は、男性が白人に当てはまるのか、当てはまらないのか、アメリカの仕組みを考えるとともに、日本のことを思ってしまいました。

 そのほかにも、理由がつかないように見えて、実はそれなりに論理的な判断で成り立っている身のまわりのことがらが、説明されています。少なくともアメリカではそうなんだろう、と納得してしまうくらいの説得力がありました。
posted by 作楽 at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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