2008年11月11日

「Luna」

20081111[Luna].jpg

Julie Anne Peters 著
Little, Brown Young Readers 出版

 主人公のLunaは、性同一性障害の17歳少女(身体は少年で、名前はLiam)。この本の語り手は2歳年下の妹、Regan。

 主人公のことを思っても、語り手のことを思っても、せつない気持ちになってしまいます。

 読んでいるあいだ思い浮かんだことばは、期待と対照。

 Liamは、本当は少女らしく振舞いたい、化粧もしたいと熱望しながら、期待された役割、少年という役割を演じることを強いられます。

 一方、Reganは、Liamから秘密を守ることを期待され、Liamがほんのいっとき少女を演じるために協力することを期待されます。

 このLiamの対照となるのが、このReganであり、彼らの母親です。Reganは女の子でありながら、アイロンのあたっていない皴くちゃな服を着たり、アルバイトを口実に母親の家事手伝いを断ったり、自分が期待されている少女という役割にあまり頓着していません。また、母親は、よき妻、よき母であることを期待されていながら、あることをきっかけに、それらの期待から逃げ出し、今では仕事中心の生活をしています。

 一方、Reganの対照となるのは、アルバイトでベビーシッターをしている家庭、Matera家です。普通でないLiamの秘密に押しつぶされそうになっているRegan、母親が以前のようにお弁当を作ってくれなくなったReganにとって、絵に描いたような夫婦に、人形に興味を持つ女の子、恐竜に興味を持つ男の子の一家は普通そのものです。

 さまざまな期待や、自分がみじめに思えてくる対照に囲まれながらも、特別なできごとが起こるわけではありません。すべてが日常ありふれたできごとばかりです。ただ、Liamが実はLunaだという一点をのぞいては。

 せつない気持ちになるストーリーですが、最後には希望が見えてきます。この本を通してLunaに寄り添ってきた読者は、きっと新しい旅立ちを祝福したい気持ちになるでしょう。そして、それまでLunaを支えてきたReganを褒めてあげたくなることと思います。
posted by 作楽 at 00:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Young Adult) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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