2008年11月20日

「エヴァ・ライカーの記憶」

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Donald A. Stanwood 著
高見 浩 訳
東京創元社 出版

 まさしく壮大なミステリです。

 1912年、1941年、1962年と時代を経て起こったそれぞれの殺人事件の全容、登場人物の秘密が徐々に明らかになってきます。そして最後には、とてつもないどんでん返しが待ち受けています。

 ストーリーは、1941年にホノルルで起こった殺人事件から始まります。旅行でホノルルを訪れていたアルバート・クラインという中年男性が毒を盛られ、車の運転中に死亡します。そのとき、車に同乗していた妻のマーサもホテルに帰ったあと殺害され、バラバラに切り刻まれた状態で発見されます。

 このとき、物語の語り手ノーマン・ホールは巡査で、このふたりの事件に大きく関わります。アルバートの車が事故を起こした現場に最初に駆けつけたのが、ノーマンでした。次に、事情聴取のために警察まで来てもらおうと、マーサを迎えに行った際、血みどろの彼女を発見します。しかも、その凄惨な現場を見て逃げ出すという失態をおかしてしまい、辞職することになります。

 そして、次の時代1962年に舞台が移り、語り手ノーマン・ホールは有名な作家にみごとな転身を遂げています。そのノーマンのところに、1912年に沈没したタイタニック号の再調査が予定されているので、記事を書いて欲しいという依頼が入ります。

 その再調査のスポンサーが、タイタニック号沈没時に記憶を失って生還したエヴァ・ライカーの父親、ウィリアム・ライカーです。あとになってわかるのですが、ウィリアムは密かにノーマンを指名したために、出版社はノーマンを起用することになったのでした。

 ノーマンは、仕事の依頼がはいったとき、宿命のようなものを感じます。それは、あのホノルルで巡査をしていたときの屈辱と関係していました。殺されたクライン夫婦はタイタニック号の生還者だったのです。

 ノーマンがタイタニック号の調査を開始し、スチュワードをしていたジョン・マクファーランドを訪ねた直後、彼は殺されます。

 そして、もうひとつ。1912年のタイタニック号沈没の前にも殺人事件は起こっていました。その秘密が、タイトルにあるエヴァ・ライカーの記憶に埋まっていました。

 時代をまたがって起こった事件の真実をノーマンは執拗に追います。「宿命」としてさだめられていたかのように。

 どのできごともあまりに偶然が重なりすぎているのですが、不思議と引き込まれてしまいます。よくできたエンタテイメント作品です。
posted by 作楽 at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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