2009年01月16日

「悪童日記」

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Agota Kristof 著
堀 茂樹 訳
早川書房 出版

どちらでもいい」の著者の代表作であり、デビュー作である作品と聞いて、読んでみました。著者のアゴタ・クリストフ氏は、驚いたことに、書き上げた「悪童日記」をいきなり大手出版社三社に送り、そのうちの一社から出版され、デビューしたそうです。しかし、そういう経緯を聞いても、読んだあとであれば、納得できるだけの作品ではありました。「どちらでもいい」は、読んでも読まなくても、まさしく「どちらでもいい」かもしれませんが、こちらの「悪童日記」や読むべき作品ではないかと思います。

 舞台も年代も明記されていませんが、第二次世界大戦下のハンガリーではないかと推測されています。

 タイトルにあるように、これは日記です。双子の少年たちが、ある日突然祖母のもとに連れてこられ、疎開することになります。祖母と絶縁状態にあった母は、食糧がなくなり、畑を持つ母のところに子どもたちを預けるしか道がなくなったのです。

 吝嗇で、不潔な祖母のもとで暮らすさまが、日記というかたちで語られます。できごとだけが淡々と綴られ、双子の気持ちは、描かれていません。普通なら、描写されないことに物足りなさを感じると思うのですが、その削ぎ落とされた文章から逆に双子たちのことが、こまかく伝わってきます。

 双子たちのことを、ひとことで表わすなら「直球」。ただ自分たちが信じる方向に突き進むのです。自分たちに必要と思うことを何が何でもやり通そうとし、助けを必要としているまわりの人に対しても本当に必要なことを提供してあげようとします。しかも、頼るのは自分たちのみ。彼らのなかには、庇護を受けるという考えもなければ、本音と建前の使い分けもありません。すべて、まっすぐ。

 そんな彼らのまわりにいるおとなたちの反応は、それぞれ違います。それらの反応を見ると、ひとりのおとなとして、心の中で揺さぶられる「なにか」があります。世に沿って流れているだけの自分につきつけられる極論の鋭利さをまた味わうために、続編も読んでみたいと思います。
posted by 作楽 at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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