2009年03月10日

「優雅なハリネズ」

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ミュリエル・バルベリ 著
河村真紀子 訳
早川書房 出版

 海外に出てみるまで、自国をたいして知らなかったのだと、気づきませんでした。知っているつもりでも、比較対象がなければ、理解が難しいと知った気がします。

 この本を読んで、自国以外を理解し伝えることは、さらに数段難しいのだろうと思えました。この本は、フランスが舞台になっているのですが、日本のことが頻出します。

 しかし、残念ながら、日本の性質として特徴的なことではなく、モノだけに焦点が当てられている気がしました。引き戸などの古い生活空間、蕎麦や刺身などの料理、囲碁などに注目するより、日本社会の無階級さを知って欲しかったと思いました。

 というのも、この本では、社会階級がことさら強調されているからです。

 本の語り手は、ルネ・ミシェル。パリの高級アパルトマンの住み込み管理人をする労働者階級。54歳。夫と死別。ルネの語りのあいだには、パロマ・ジョセの日記が挟まります。パロマはその高級アパルトマンに住む下院議員の二女。12歳。13歳の誕生日にはアパルトマンに放火して自殺する計画です。

 同じアパルトマンに住みながら、社会階級も年齢層も違うルネとパロマの共通点は、感受性豊かなこと、知性があること、上流階級に対して批判的なこと。そして、親日家。ルネは、小津安二郎の映画ファンで、日本の様式美や古典に興味があります。パロマは、マンガ好き。

 ルネは、その知性を表に出さないように注意深く、典型的な管理人を演じようと心の壁を築いて生活しています。一方、パロマのほうは、生きていく価値を見いだせずにいます。

 しかし、日本人のオヅ氏がアパルトマンに引っ越してきて、ふたりは変わっていきます。

 階級差や年齢差など、ひとが心に壁を築く理由には事欠かない気がします。その壁をひょいと越えてしまうオヅ氏は、なんとなく出来過ぎのような気がしますが、それなりに楽しめる本だとは思います。



posted by 作楽 at 00:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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