2009年03月26日

「ぼくには数字が風景に見える」

20090326[BokuniwaSuujigaFuukeiniMieru].jpg

Daniel Tammet 著
古屋 美登里 訳
講談社 出版

 サヴォン症候群であり、アスペルガー症候群である著者の今までを綴った本です。映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた兄のほうのモデルとなったキム・ピーク氏はサヴォン症候群でした。「The Curious Incident of the Dog in the Night-Time」の主人公Christopherはアスペルガー症候群でした。

 数字や記憶に桁外れの能力を発揮するのが特徴です。

 そういう能力は、「共感覚」と呼ばれる複数の感覚が連動する現象が起こることと関係するようです。共感覚とは、具体的には、文字や数字に色が伴って見えるような感覚のことだそうです。この本の著者の場合、数字ひとつひとつの個性が色や形として見えるそうです。たとえば、素数は素数に共通する見え方をするので、桁数の大きな素数でも見たときの雰囲気で素数とわかるそうです。また、ふたつの数の積などを考えるとき、数字の色やかたちがあらわれ、共感覚を使って計算できるそうです。

 そう説明されても、正直ちんぷんかんぷんなのですが、この共感覚は誰でも持っているものだそうです。たとえば、「楽しい」と「上昇」、「悲しい」と「下降」は落ち着く組み合わせです。「楽しい」と「下降」がペアになっていると落ち着きません。これは違う感覚を結びつけていることになります。クイズで、青色に彩色された「赤」という字を見せられ、漢字の読みを即答すべきなのに、「青」と実際の色を答えてしまうのが自分では不思議でした。共感覚を説明されて、なんとなくこのクイズを思い出しました。

 著者の場合、ただの数字も色を伴って見えるので、実際数字に彩色されていて、その色が著者の見える色と異なる場合、記憶の低下が起こります。

 こういう面だけに着目すると、ずいぶん羨ましいのですが、彼らは、社会的生活を阻害されるような問題も抱えています。たとえば、かんしゃくやパニックを起こしやすいのです。予定が崩れることに対する抵抗が大きく、人との接触に極度のストレスを感じるそうです。

 そういう著者が、子どもの頃いじめられたことも、友だちをつくろうと懸命だったことも、大学に入らないことを決めリトアニアで英語を教えるボランティアに応募したことも、本のなかで淡々と語られています。

 すごいと思うのは、パニックを起こしやすいなど、社会生活を困難にする問題を抱えていても、本人が自立心に溢れている点です。今では、親元を離れパートナーと暮らし、語学学習Webサイトを立ち上げて収入を得ています。もっとすごいと思うのは、著者の両親です。著者を含め九人も子どもを育てた両親は、(なかなか診断が難しく、一般的に認知もされていない症状のため)サヴォン症候群だともアスペルガー症候群だとも知らずに、著者を立派に育て上げたことです。相当手のかかる子どもだったのではないかと思うのです。

 「みんなそれぞれ違う」ことは、「みんなが同じ」より素晴らしいことではないか、そう思えるような本です。
posted by 作楽 at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック