2009年03月31日

「ミュージック・ブレス・ユー!!」

20090331[MusicBlessYou!!].jpg

津村 記久子 著
角川グループパブリッシング 出版

 なにかで読んだのですが、小説を褒めるものさしは二種類あれば十分で、ひとつは身に詰まされること、もうひとつは我を忘れることだそうです。わたしは、この本を読んで、身に詰まされました。

 なんのことはない普通の高校三年生、アザミの半年です。アザミは特別成績がいいわけでもなく、将来の夢があるわけでもなく、進路をどうするか真剣に考えることもできず、ただ学校に通い、友達と駄弁り、何をすべきなのかわからないまま日々が過ぎていく感じです。周囲の人と少し違うのは、注意されない状況下にあれば片時もヘッドフォンを離さずにいるくらい音楽が好きなこと。毎日聴いた曲とどの程度いいと思ったかを記録し続け、同じ曲でも日によって受ける印象が違うことや、どの曲に偏っているかを発見したりする日々。でも、それに意味があるのか、わかりません。ただわかるのは、音楽が何より大切という事実だけ。

 その日常を読むと、まるでわたしの毎日のようだと思わずにはいられません。もちろん、とっくの昔に高校生ではありませんし、将来の夢がなくても当然なのですが。まるで、アドベント・カレンダーのような毎日。

 アドベント・カレンダーは、降臨節(クリスマスイブまでの約4週間)と呼ばれる期間に使われるカレンダーで、子ども用には、一日ずつ扉があり、なかに小さなお菓子などが入っているものなどもあります。毎日、昨日とは違う扉を開けるけど、開けるという動作もなかに入っているお菓子も変わり映えのしないアドベント・カレンダー。毎日、昨日とは違う日付にはなっていくけど、その中身である一日の時間は変わり映えのしない日常。ただ、アドベント・カレンダーのいいところは終わりがあることです。クリスマスイブがくれば、もう終わり。しかし、日常に終わりは見えません。

 でも、この本を読んでいるうちに、同じ毎日でも、アドベント・カレンダーのなかに入っているキャンディをぽんと口に放り込む程度にいいこともあれば、それと同じくらいにツイていないこともあるのだと思えてきました。

 こまかくこまかく描かれているアザミの内面を読めば、なぜか見えてくるのは自分の内面です。「あるある、そういうこと」と思った瞬間、自分を振り返っています。

 最初は今どきの高校生口調を読みにくいと思ったはずなのに、いつしか引き込まれて、なかなか好きな一冊になってしまいました。装丁もとても気に入っています。
posted by 作楽 at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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