2009年05月08日

「The Return of Depression Economics and the Crisis of 2008」

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Paul Krugman 著
W. W. Norton 出版

 著者のポール・クルーグマン氏は、2008年のノーベル経済学賞の受賞者です。とはいえ、飛びぬけて秀でた人の書いたものは、わたしのような凡人にもわかりやすいです。経済のいろはも知らずとも、簡単な身近な例を挙げて、誰にでもわかるように説明されています。

 クルーグマン氏は、昨年のリーマン・ブラザーズ破綻からどんどん悪化している状況は、1990年代の日本のバブル崩壊と同じ道筋を辿る危険をはらんでいるといいます。

 では、1990年代の日本はどういう状態だったのかというと、グロース・リセッションにあり、流動性の罠に陥っていたというのです。

 グロース・リセッションというのは、経済成長(グロース)しているのに、不景気(リセッション)という、やや珍しい状況のようです。経済成長はGDPを指針としているのですが、たしかに日本の場合、1980年代に比べると落ちていましたが、バブル崩壊後もマイナス成長が続くといったほどではありませんでした。でも、不景気に感じていたのは、実際はもっと経済拡大しているのに、GDPがそこまでに至らず、設備や人が余っている状態になっていたからと説明されていました。なるほど。

 流動性の罠というのは、金融緩和を実施しても、効果がなくなる状態に陥っているということだそうです。景気が悪くなると、金利を下げ、融資による設備投資などに期待します。しかし、金利が低くなっても、景気がよくなるとは限りません。結局は、設備投資が収益拡大に向かい、人々が賃金から消費しなければ、全体としての景気感は変わりません。日本の場合、先行き不安が強いためか、消費に結びつきませんでした。しかも、債権でも持っていても現金で持っていても同じようなものですから、タンス貯金になってしまいました。クルーグマン氏は、そういう流動性の罠に陥った状況は、インフレにならなければ脱出できないといいます。つまり、今持っている現金が目減りするなら、使ってしまおう、という方向に人々が動かないと景気は良くならないそうです。

 個人的には、インフレになってまで景気が上向くことが大切なのかが、よくわかりませんでした。(もともと、あまり景気に影響されない生活をしているのかもしれません。)

 著者は、日本のバブル崩壊後の状況に陥らないためには、すべきことは二点あるといいます。ひとつは、以前と同じだけ銀行が融資業務を行なえるよう、銀行に資本を注入すること。もうひとつは、公共事業などを大規模に実施し、景気刺激対策を怠らないこと。前者は、世界各国が足並みを揃える必要があるといいます。ここ二十年くらいのグローバル化により、国境を越えて流れていた資金が従来どおりに動く必要があるというのです。

 この本の数字を見ていると、頭がくらくらしてきました。たとえば、米国の銀行には2兆ドルくらいの資金を投入するのは当然であり、融資が正常化しなければ、正常化するまで資本を入れる必要があると書かれています。

 これが、現実の話ではなく、学問で終わる話ならいいのに、と思ってしまいました。わたしは、今までどおり、のほほんと生活していけるのでしょうか。
posted by 作楽 at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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