2009年10月27日

「災厄の紳士」

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災厄の紳士
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書評/ミステリ・サスペンス


 中盤にさしかかったとき既視感を覚え読書記録を探してみたら、ありました、これと同じ作家D.M.Devineの「ウォリス家の殺人」。その訳者あとがきには、わたしの既視感をそのまま表現した部分がありました。「実はディヴァインの作品には、舞台や登場人物や小道具などに、一定のパターンが感じられるのです」

 ふたつの作品に共通する部分だけをつなぎあわせていくとこんな感じです。

 作家として高い評判を得た時期がありながらも、ある出来事をきっかけに下降線をたどった偏屈な男がいます。その男は、過去の秘密をもとに強請られますが、なんとか隠蔽しようとします。家族はその恐喝がもとで何か不吉なことが起こるのではないかと怯えながらも、男を見守るしかありません。男は円満な家庭を営んでいるわけでも、理解ある父親でもないのです。そしてある日、殺人事件が起こります。その殺人事件をとくのは、諍いのどろどろした部分をよく知る人物です。殺人犯がわかると同時に、恐喝内容も明らかにされます。それは男が過去に関係をもつべきではない女性と性的関係をもったことが原因になっています。

 たしかにここまで共通点があると、一定のパターンと解説されても仕方がないと思います。わたしなどはその解説を読んで、だったら一作読めば充分かという印象をもってしまいましたが。(ただ、肝心の作家名を完全に忘れ、二冊目を読んでしまう結果にはなりました。)

 不思議なことに、一定のパターンを認識しながらも、犯人は誰かが気になって先へ先へと読み進めてしまうことに変わりはありません。やはり、緻密なプロットが魅力なのでしょう。

 この作品では、ジゴロのネヴィル・リチャードソンが共犯者の入れ知恵で、有名作家だったエリック・ヴァランスの娘アルマ・ヴァランスを騙して結婚の約束をとりつけようとするところから始まります。その狙いは何なのか、共犯者は誰なのかが気になって引き込まれていきます。そして、その狙いが有名作家だった父親の恐喝だとわかった途端、ネヴィルは殺されてしまいます。そのあとは、犯人が誰かが焦点になり、ひっぱられてしまいます。

 「ウォリス家の殺人」と似ているとわかったあともぐいぐい惹きつけられてしまうところに、この作家の力量があらわれていると思います。
posted by 作楽 at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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