2009年11月09日

「水時計」

20091109[Mizudokei].jpg

ジム・ケリー (Jim Kelly) 著
玉木 亨 訳
東京創元社 出版

 水にまつわる忌まわしい記憶をもつ男が、イギリスの沼沢地帯で起こった事件を追う本格ミステリです。タイトルがとても気に入りました。

 水に脅かされる海抜の低い沼沢地帯で起こる事件を追う新聞記者フィリップ・ドライデンは子供の頃、クリスマス・プレゼントのスケート靴で滑っている最中、川に落ちてしまったことがあります。そして、成人したあとも、妻と車で移動中に川に落ちるという災難に遭っています。そんなドライデンの過去の記憶が時間を超えて表面にあらわれることがあります。それは、事件を追い危険に迫ってしまったとき。水で時を刻む水時計と時間を自由に行き来するドライデンの水にまつわる記憶。うまくできたタイトルだと思います。

 最初の死体は、ラーク川に沈められていた盗難車から見つかります。後頭部を撃たれ、トランクに詰め込まれていました。その翌日、大聖堂の屋根で白骨化した二番目の死体が見つかりました。1960年代頃から誰にも発見されず、大聖堂の屋根修復工事をきっかけに見つかりました。

 小さな街で立て続けに見つかった死体に関係があるのでは、と疑うのは自然なことです。たとえ、数十年隔たった殺害時期でも。そういう疑いをもったひとりがドライデンです。ドライデンは記者として追う必要がある以上に事件を執拗に追い犯人をあぶりだそうとします。それは警察に貸しをつくり、ある事故記録を閲覧するため。妻と移動中に車ごと川に落ちた事故は、ドライデンたちの車の前に突然飛び出してきた車が原因でした。その記録はなぜか極秘扱いになっていて閲覧できません。だから、警察に貸しをつくりなんとかその事故記録を手にしたいと考えたわけです。

 記者として二件の殺人事件を追いながらも、自分の辛い過去−−妻をベッドの上から起き上がることも話をすることもない状態に追いやった事故−−の真相も究明しようとするドライデン。地方の記者であるドライデンは日常のこまかな事件も同時に追いかけますが、そこには殺人事件の伏線もたくさん仕込まれていて、あとであっと思う場面がたくさんあります。

 沼沢地帯の風景や水の記憶と数々の事件がうまくまじり合った作品です。
posted by 作楽 at 00:48| Comment(0) | TrackBack(1) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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