2009年11月18日

「Getting Off Track: How Government Actions and Interventions Caused, Prolonged, and Worsened the Financial Crisis」

20091118[GettingOffTrack].jpg

John B. Taylor 著
Hoover Institution Press 出版

 日々の経済ニュースでまめに取り上げられる政策金利ですが、その適正水準を計算するモデルにテーラー・ルールというのがあります。その発見者が、この本の著者、ジョン・B・テーラーです。

 著者は、今回米国で端を発した金融危機は、この政策金利がテーラー・ルールから乖離し過ぎていたことが原因だったと述べています。あまりに低い政策金利が続いたために住宅バブルが大きく膨らみ、はじけたときの打撃も大きくなったと主張しています。(住宅バブルが大きく膨らんでいた時点では、政策金利もかなり上昇していましたが、著者は2002年から2004年の間の金利を問題視しています。)

 好況のときはこれが長く続いて欲しいと願い、テーラー・ルールから離れてしまったのかもしれないと、素人ながらに考えてしまいました。でも、その好況が大きかった分、次にきた不況も大きくなったということなら、一般消費者に過ぎないわたしとしては、テーラー・ルールに執着し、小さな好況不況の波を繰り返してくれるほうがありがたいと思ってしまいました。ただ、好況時における大量の資金流入があってはじめて成り立つ大事業や大改革を必要とする立場の人たちは、波がなさ過ぎると困るのかもしれませんが。

 今回の金融危機はこうして政策金利の失策により起こったと著者は主張していますが、失策はそれだけではなかったと言います。金融危機が表面化したあとの米国政府の計画性や透明性のなさが、この危機を長引かせたというのです。具体的は、大量の不良債権が見込まれるようになった時期の不良資産救済プログラム(TARP)の発表が不適切だったということです。リーマンの破綻で市場が混乱し、その対処が求められるなか、どのような不良資産は救済されるのかの「ものさし」が提示されなかったのは、市場の混乱をさらに拡大する結果になったと言います。実際、リーマンは助けられず、AIGは助けられたことに、「ものさし」の不透明さを感じた人は多かったようです。著者は、どのような対処が施されるかが明示されれば、将来への不安はおさまり人々は冷静に対応できると言います。実際、詳細なく不良資産救済プログラム(TARP)の実施のみが表明されたあと、金融市場の信用収縮が見られました。そして、きちんとした詳細が発表された時点では信用収縮に改善が見られました。この件は、ひとりの国民としての漠たる将来への不安を考えるときも、同じように感じるので、とても納得できる意見でした。

 著者の考えが正しいかどうかを判断する力はありませんが、ひとつの見方として、とても参考になりました。

posted by 作楽 at 07:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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