2010年03月02日

「虚栄の市〈一〉」

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William Makepeace Thackeray 著
中島 賢二 著

 サッカリーの出世作ともいわれる作品。読んでみようと思ったきっかけは「鷺と雪」に登場する女性運転手のニックネームがこの作品の登場人物ベッキーからきているというくだりを読んだからです。なかなか強烈な個性の持ち主のようで、興味をかきたてられました。

 この巻は、そのレベッカ(ベッキー)・シャープとアミーリア・セドリがチジック・モールという寄宿学校を卒業し、ベッキーは仕事へ、アミーリアは花嫁修業へと、それぞれ違う道のスタートをきるところから始まります。

 ベッキーは、したたかで底意地が悪い一方、頭の回転がずば抜けて速く、周囲の男たちを手玉にとり自分の味方にしていきます。それと対照的なアミーリアは、良心の塊で、一途な恋に心のすべてを奪われ日々過ごしているあいだに、絶対なる庇護を与えてくれると思い込んでいた父親の没落により貧しくなってしまいます。

 読み始めのころはレベッカが主人公で、彼女の性質を際立たせるために対照的なアミーリアを登場させたのかと思っていました。しかし、副題に「主人公のいない小説」とあり、どちらが主人公というわけではないようです。どちらもドラスティックに変貌をとげ、物語が展開していきます。それだけでも、小説のスタイルとしては変わっていると思いますが、作者が登場し直接読者に話しかける点でも、珍しいと思います。

 しかも、作者はかなりの皮肉屋で、舞台となっている上流社会をちくちく批判したり、先の出来事について思わせぶりに匂わせたり、なかなか雄弁に語ります。先が楽しみです。
posted by 作楽 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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