2010年06月08日

「真夜中の死線」

20100608[MayonakanoShisen].jpg

アンドリュー・クラヴァン (Andrew Klavan) 著
芹澤 恵 訳
東京創元社 出版

 これぞサスペンス! そういいたくなるような本です。最後まで読みきったあとは、茶木則雄氏による解説があり、今しがた読み終えたばかりの気持ちを代弁してくれるかのような内容に同意を込めて大きく頷きたくなります。

 死刑執行まで17時間40分しか残されていない状況で、6年前のスーパー強盗殺人が冤罪だと確信した『セントルイス・ニューズ』の報道記者スティーヴン・エヴェレットを追うサスペンスは、筋立て自体は特別目新しいものではありません。でも、それを強く盛り立てているのは、それぞれのキャラクターです。

 冤罪を晴らそうとするエヴェレットだけでなく、バーベキューに必要なソースを買いに行ったばっかりに強盗犯どころか殺人犯にされた死刑囚フランク・ビーチャム、その死刑執行を指揮管理する立場の刑務所所長ルーサー・プランキット、真犯人の鍵を握る黒人女性アンジェラ、そのほか事件には何の役割も果たさないエヴェレットの2歳の息子デイヴィまでもが、鮮明な映像を見ているかのように読み手のイメージのなかで動きだすほどです。

 とりわけ、フランク・ビーチャムがおとなになった娘に読んでもらいたいと手紙を書く場面や死刑を目前に控えたビーチャム一家の心を乱したエヴェレットに対し、静かながらも確固たる怒りを示すプランキットなど、真犯人・真実を追う者だけでなく、自分に与えられたものを粛々と受け止める者たちをも、読み手のまえにその存在をくっきりと浮き上がらせることができた作品だから、最後の最後まで固唾をのんで成り行きを見守ってしまうのでしょう。

 多方面にわらる要素を一度に満足させてくれる作品です。
posted by 作楽 at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック