2010年07月01日

「ボックス!」

20100701[Box].jpg

百田 尚樹 著
太田出版 出版

 シンプルゆえに直球で伝わってくる作品。舞台は大阪にある高校のボクシング部。

 3年間の高校生活で一勝をあげることもできずに卒業していく部員がほとんどの恵美須高校に天性の才能をもった鏑矢という一年生が加わり、インターハイ出場を決めます。これによって顧問の先生も手続きやら引率やらいろいろ大変になり、ボクシングをまったく知らない英語教師の高津耀子がふたりめの顧問を担当することになります。

 この耀子が物語の語り手になっていて、わたしのようにボクシングをまったく知らない読者も、耀子の素人の視点を通してボクシングの世界に入っていけます。そして、もうひとりの語り手は、鏑矢の幼馴染みの木樽です。授業料免除の特待生という軟弱な少年ですが、ある日突然ボクシング部に入り、猛練習を始めます。地道に指導された内容をきちんとこなし、寸暇を惜しんでボクシングに励む木樽の視点は、徐々に成長してボクサーの視点になっていきます。

 このもって生まれた運動神経で難なく勝つ鏑矢と自分の能力を信じて努力に努力を重ねゆっくり伸びていく木樽の対比は、それぞれ恵まれたものの違いとどう向き合うかを考えさせてくれます。そして、やりたいこととできることの違いにどう向き合うかも。しかし、天性の勘だけで渡っていけるほどは甘くはなく、鏑矢は壁にぶちあたります。そして、読者はこんどは壁とどう向き合うかを考えることになります。

 損得に縛られず、欲しいと思うものを思うままに求めていけるのは、とても恵まれたことです。そして、その恵まれた状況におかれているひとつが若いときだと思うのです。(とっくに過ぎ去ってからしか気づけないわたしのような愚かな人間もいますが。)若い世代の人で、端的に答えを求めたくなるタイプの人にお勧めしたいです。ちなみに、この作品は映画にもなっています。
posted by 作楽 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(1) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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