2010年08月05日

「感光生活」

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小池 昌代 著
筑摩書房 出版

 川端康成文学賞受賞の「タタド」を書かれた作家の短編集です。15編収められています。

 どれも日常のひとこまを切り取った作品なのですが、不思議なのは、この作品を読んでいると、わたしの日常にもなにか詩的なもの、小さくても素敵ななにかが埋まっているのではないかという気になってくることです。何気ない日常が、手垢のついていない個性的なことばで綴られ、鮮やかなイメージとともに伝わってくるから、そう思えてくるのかもしれません。

 このなかで一番印象に残っているのは、「クラスメイト」です。ある日突然主人公は、ずっと疎遠だった同級生から手紙を受け取り、それをきっかけに会うようになります。しかし主人公は、相手が本当に同級生だったのかと疑うほど、相手のことを何も覚えていません。話していくうちに、こんどは同級生以外は考えられないと思うほど、相手はクラスメイトのことをよく覚えていることに気づきます。自分でさえ忘れているような些細なことも、相手は覚えているのです。そして短いストーリーの最後に主人公は驚く発見をします。その発見を読んだとき、わたしにもこういうものが埋まっているに違いない、そう思えてきました。

 これを読んでいるあいだ、自分の日常さえいつもと違う気がしてきました。
posted by 作楽 at 07:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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