2010年08月17日

「シーラという子」

20100817[SheelahtoiuKo20].jpg

トリイ・ヘイデン (Torey Hayden) 著
入江 真佐子 訳
早川書房 出版

 胸に迫ってくるものがありました。

 著者は情緒障害がある児童ばかりを集めたクラスを受け持つ先生で、シーラというのは著者がかつて担当した生徒です。シーラは、ずっと虐待を受けてきたために凶暴になり、たった6歳で、3歳の子供の自由を奪い火を放つという事件を起こすまでになっていました。

 その結果、シーラは病院に収容されることになったのですが、ベッドに空きがないため、とりあえず著者が担当する障害児クラスに来ることになったのです。

 著者はこう書いています。
<<<<<
大人になったいまでは、自分とはちがう生活をする人々もいるということがわかっているし、この自分とはちがう生活もまた、彼らにとってはやはりごくふつうのものなのだということがわかっていた。わたしはその事実を受け入れることはできたが、理解することはできなかった。
>>>>>

 自分の身をもって体験していないことを本当に理解することは並大抵ではできないと、わたしも思います。ただ、理解できないことは知る必要もないとは思いません。理解できなくても、このシーラのような少女がいることを知っているほうがいいように思うのです。著者も同じように考えているのではないでしょうか。

 だから、著者は自身に向き合い、感じたためらいも困惑も無力感も怒りもすべてありのまま書こうと努めたに違いないと想像するのです。たぶんありのままを知ってもらいたいから。

 わたしがこの本を読んで少しばかり何かを知ったからといって世の中は何も変わらないと思います。それでも、読んでよかったと思います。ほんの少し−−たとえばヘアピンをひとつもらう程度−−優しくされただけでも、他人がなぜ自分にそんなに優しくしてくれるのかわからなくてとまどわなくてはいけない少女のことを知ってよかったと。
posted by 作楽 at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック