2010年08月24日

「チャイルド44」

20100824[Child44].jpg

トム・ロブ・スミス (Tom Rob Smith) 著
田口 俊樹 訳
新潮社 出版

 一気に最後まで読ませてしまう力のある作品です。舞台はスターリン圧政時代のソ連で、物語の核は子供ばかりが犠牲になる連続殺人です。タイトルの44は、わかっているだけで44人の子供が犠牲になっていることから付けられています。サブ・プロットは、主人公レオの再生です。

 主人公レオ・デミドフは、国家反逆罪を取り締まる国家保安省の捜査官でした。国家の方針に逆らう意思を持っていると疑われる人間を次々と断罪していく部署で優秀と認められていたのです。つまり、無実の罪で裁かれる人をいくら生みだそうと、国家に逆らおうとする人間をひとり残らず処分できればいいという方針のもとに糾弾を繰り返していました。

 それが、些細な隙をつくったばかりに罠に落ち、その結果降格されモスクワからヴォウアルスクという片田舎に飛ばされてしまいます。そこで偶然、モスクワで聞いた事件と酷似した事件に遭遇します。子供ばかりが被害になっていることから、何としてもこの連続殺人をとめたいと奔走するレオは、家庭にも問題を抱えていました。言いがかりをつけて国家反逆罪で訴追することができる立場を利用して、レオが自分を殺すのではないかと恐れ、生き延びるためにレオと結婚した妻との関係です。

 このふたつの筋がうまく絡み合い、おもしろい展開になっていきます。読み始めたときは、説明くさいと感じたのですが、やはり圧政配下におかれた人々の考え方は読めず感情移入しづらいので、事細かな説明がちょうどいいと感じるようになりました。ただ、レオが片田舎に飛ばされて以降は、圧政に苦しむ人々がことごとく善良な人として描かれていて、特権階級にある人たちとの対立・対照としてはわかりやすくても、少し現実味が足りない気がしました。

 細かな点で気になる点はあるものの、それを凌ぐ力強さがある作品で、何と何がどうつながってくるのか好奇心を抑えられなくなってしまう作品ではありました。
posted by 作楽 at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック