2010年10月15日

「サラの鍵」

20101015「サラの鍵」.jpg

タチアナ・ド ロネ 著
高見 浩 訳
新潮社 出版

 1942年にホロコーストの被害に遭った少女の視点と、その60年後にその惨事を忘れまいと開かれる記念式典を記事にするジャーナリスト、ジュリアの視点が交互に語られます。そして、中盤に入ると60年前と現代がどのように結びつくのかの謎が明かされ、ジュリアひとりの視点に収束していきます。

 ホロコーストにしろ侵略にしろ、遠い昔のことと捉えがちな現代の人間を、巧みな設定で60年前の出来事へと惹き込むように書かれてあり、こういう話題にありがちな高い壁を感じさせません。

 また、たった10歳で被害にあった少女の視点は、ただただ無垢で大人の事情を斟酌することなく直球で攻めてきて、胸に迫るものがあります。

 一方、ジュリアはジャーナリストという立場より、ひとりの人間あるいはひとつの命を授かった母親としての立場のほうが強く、少女に寄り添います。

 だからといって、正義だけを振りかざす物語になっているわけではありません。

 多くの方が直接手にとって、この作家の強いメッセージを各自が受け取って欲しい、そう思った本でした。
posted by 作楽 at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック