2010年10月19日

「心ふさがれて」

20101019「心ふさがれて」.jpg

マリー ンディアイ (Marie NDiaye) 著
笠間 直穂子 訳
インスクリプト 出版

 第15回(2010年)日仏翻訳文学賞受賞作品です。

 わたしの貧しい語彙では<不思議>としか形容できない独特な雰囲気のある作品です。

 何の予備知識もなく読み始めたのですが、最初はサスペンス作品かと思う場面が登場し、そのうち現実ではなく幻想の世界を舞台にしているのかもしれないと思えてきました。それと同時に主人公を覆っていた土壁のようなものが刮げおちるかのように、彼女自身の内面が見えてきて、必死に塗り固めようとしたものがあることがわかってきます。

 誰にでも消してしまいたいものはあります。主人公はその消してしまいたいものを見事なまでに消し去り、そのことを記憶から追い出し、生きてきました。それによって周囲の人たちがどういう思いをするのか想像することを一切拒否して。

 こういう人は身近にもいるという現実感がある一方で、夢のなかの出来事のような捉えどころのない虚構感もあって、相容れないと思っていたものが混在するあたりが、わたしにとっては不思議な感じでした。

 この<不思議>な世界観を体験するだけでも、読む価値はあると思います。
posted by 作楽 at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック