2010年10月22日

「100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影」

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春日 真人 著
日本放送出版協会 出版

 1世紀ほどのあいだ解明されなかった難問のひとつにポアンカレ予想というのがあります。アンリ・ポアンカレという数学者が提唱した予想で「単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相である」というものです。

 でも、数学に馴染みのない人たちにとっては、何を言っているのかちんぷんかんぷんですし、それが何を意味するのか想像もつきません。それをできるだけわかりやすく説明したうえで、2002年にポアンカレ予想を解明したとインターネット上に論文を公開したグリーシャ・ペレリマン博士の人となりを少しでも紹介しようというのがこの本の趣旨です。

 その前半部分、ポアンカレ予想とはどういうものかを乱暴に短くしてしまえばこんな感じです。ある港から西へ西へ(あるいは東へ東へ)と航海して同じ港に辿り着けても、地球は球体だと証明できたことにはなりません。なぜなら、北極と南極を貫く穴が開いていてドーナツ状かもしれないからです。では、どうすればいいのでしょうか。

 証明するには、1本の長いロープを使うのです。まず、港を出るときロープの一端を港に結び付け、もう一端を持って出ます。次に、地球をまわって港に帰ってきたとき持っているロープの端と港を出て行ったときに残していった端の両端を持ってロープを最後まで手繰り寄せることができれば、地球に穴はあいていなかったということが証明できるというのです。(山脈など多少の高さがあっても、地球全体の大きさを考えれば無視できる程度ですが、穴があいているとロープは超えられないことが実験でわかっています。)

 もう地球のかたちはわかっているのであまり意味はないのですが、これが宇宙のかたちだったら、どうでしょう。「三次元球面と同相である」と証明されれば、宇宙のかたちを知る道のりを進むことができます。

 とにかく何の専門知識がなくても理解できるよう工夫されていますし、証明したペレリマン博士はとても個性的な方なので、読んでいて飽きることがありませんでした。数学も科学も苦手ですが、本の読まず嫌いはやめておこうと思わせてくれた本です。
posted by 作楽 at 00:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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