2010年11月02日

「放浪記」

20101102「放浪記」.jpg

林 芙美子 著
新潮社 出版

 波乱万丈な人生を送った「林 芙美子」が1922(大正11)年からの5年間に書いた雑記帳をもとにした日記スタイルの作品です。

 第一部、第二部、第三部と分かれているのですが、それぞれが5年間からの抜粋なので、順番に読んでいくと、20歳頃だった著者が25歳くらいになり、また20歳に戻るということが繰り返されることになり、少し混乱します。検閲上問題のなさそうな部分を最初に第一部として出版し、時間をすこしおいて次に第二部を出版したという経緯があるようです。

 そうわかって読めば特に混乱なく読めます。いつ何が起こったということより、著者がどう感じどう考えそれをどう表現したか、を読む作品だと思うからです。

 ただ、わたしは著者に共感するとか感情移入しながら読むということはできませんでした。たぶん、この本が出版された昭和初期は日本という国がまだまだ貧しく、この本に描かれる著者の貧しさや上昇志向に共感できる人も多くいて、愛読されたのではないかと推測できる程度です。

 この一世紀足らずのあいだに日本人女性の暮らしは男性以上に変わったと思います。学費を自分で稼ぎながら学問を修めること、職をもつこと、家族から自立することなど、当時の著者は、きっと現代人のわたしが想像する以上に、周囲の目には破天荒に見えたのではないかと想像しています。そういうところも、当時の女性の心に訴えるものがあったのかもしれません。

 でも、当時の風俗や著者の葛藤などが興味深くて、知らなかったことを知るという愉しみがありました。

「晩菊」が著者の代表作のひとつらしいので、それを読んでみたいと思います。(「林 芙美子」の作品をひとつくらいは読んでみたいと思うほど、彼女の際立った個性が伝わってきた「放浪記」でした。)
posted by 作楽 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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