2010年11月05日

「やんごとなき読者」

20101105「やんごとなき読者」.jpg

アラン ベネット (Alan Bennett) 著
市川 恵里 訳
白水社 出版

 本を読むということは、生活の一部であり、豊かさや成長の象徴であり、純粋なる愉しみだと思います。しかしそれは、自ら進んで本を読む人にしか当てはまらないかと思いますが。本を読まない人にとって、本を読むということは、無駄のかたまりのようなものでしょうか。

 そういう読む人と読まない人の攻防(?)をくすっと笑えたのがこの「やんごとなき読者」。読書にはまってしまったのは、あろうことか英国女王です。読みたい本のリストをつくり、議会に向かう馬車のなかから手を振りつつ視線は窓の下においた本に注ぐという技を磨いて本を読み、公務を優先させるべきだと考える個人秘書に応戦しながら、最後にある重大決心にたどり着きます。

 わたし自身が共感できたのは、もっと早くに本を読み始めていればよかったという女王の後悔の部分です。でも、この本を「イギリスで30万部のベストセラー」にしたのは、なんといっても読書にはまった「やんごとなき読者」が英国女王、つまり特定の宗教や特定の人種や特定の作家に肩入れすることが許されない立場にある、いまだ国民の関心を集めている特別な存在だったからではないでしょうか。
posted by 作楽 at 01:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック