2010年11月30日

「一九八四年」

20101130「一九八四年」.jpg

ジョージ・オーウェル (George Orwell) 著
高橋和久 訳
早川書房 出版

1Q84」で話題になったこの作品に新訳があると知り、読んでみました。本を開けばそこに、かつてのソ連をリアルに誇張した世界が広がっています。もしスターリンが生きていた時代にわたしも生きていたら、この本を読んで恐怖を感じたのでしょうか。

 ソ連が崩壊してしまい、冷戦も過去のものになってしまったいま読むと、鼻で嗤ってしまいたくなる馬鹿馬鹿しさを感じながらも絶対に世界をこんな風にしてはならないと考える一方で、グローバル化が進んでしまった現代以降、こんな国家が新たに生まれる可能性があるようには思えませんでした。

 たとえば、主人公のウィンストンは日々過去の新聞や雑誌などありとあらゆる記録を改変する仕事をしています。党の独裁者ビッグ・ブラザーの発言通りにものごとが進まなければ、現実にあわせて過去の発言を書き換えるのです。ビッグ・ブラザーが間違えることなどありえないからです。

 異常としかいいようのない世界なのですが、ひとつひとつの細かい描写を読むうちに、ある考えが頭から離れなくなってしまいました。

 それは、この本のなかの異常な世界と不満を抱きながらも人々が幸せに暮らせる世界の境界はどこにあるのかという疑問です。誰が見ても見誤らないような明確な境界線は、きっとないはずです。そう思い至ったとき、この作品がもつ怒りのようなものがより強く感じられた気がします。
posted by 作楽 at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック