2011年05月25日

「トロンプルイユの星」

20110525「トロンプルイユの星」.jpg

米田 夕歌里 著
集英社 出版

 第34回すばる文学賞受賞作品です。読みながら、「世界五分前仮説」を思い出しました。

 世界は五分前にできたのかもしれないという、その仮説を初めて聞いたとき、少なくとも自分が生まれた以降に世界ができたはずはないと考えました。

 しかし、人の記憶が現実であるという証明はできない、つまり世界が五分以上前から存在していたと証明することはできないと知り、自分の記憶の根拠のなさにたじろいだ覚えがあります。

 この小説は、そんな心もとない想いや自分という基盤が足下から揺らぐような感覚を呼びおこす作品です。

 主人公サトミは、小さなイベント企画会社で、アルバイトの男の子に手を焼いたり、スケジュールに追われたりしながら、働いています。ある日、同僚の久坂という男性から奇妙な誘いを受け、一緒に休日を過ごします。ちょっと風変わりかもしれないけどデートに見えなくもないふたりの時間に、読んでいてロマンスの始まりを期待したのですが実は、始まりとは違う方向へと物語は進みます。

 サトミと久坂のつながりに、不確かさのなかの確かさ。そんなものを感じました。
posted by 作楽 at 01:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック