2006年07月31日

「11分間」

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パウロ・コエーリョ 著
旦 敬介 訳
角川書店 出版

 フィクションは一切読まないという友人がいます。とても優秀なコンピュータエンジニアなので、技術書は山のように読んでいると思います。どうも、フィクションを読んでも技術が向上するわけでも他の知識が増えるわけでもないので、時間の無駄だと考えているようです。

 そういう価値観もあると思いますが、小説を自分の楽しみのために読むのは、私にとっては有効な時間の使い方です。小説の世界のことも、実は私の生活の中で現実と交わっていきます。私自身が虚構の世界と現実の世界の出入り口になっているのです。

 たとえば、「女たちは二度遊ぶ」のように、男性の視点で書かれていると、読んでる間、本の中での男性の視点を追ってしまいます。それだけでなく、現実の世界で、男性はこういう視点で見ているのかな、と気になったりすることもあります。

 女性が主人公だと、もっと感情移入しやすくなってしまいます。この「11分間」は、私が主人公に共感してしまった小説のひとつ。第三者の視点で語られているのですが、主人公のマリーアの書く日記が何か出来事があったときに登場する形式で書かれています。マリーアは、私が見たこともない国、ブラジルで生まれ、芸能プロデューサーを名乗る男に連れられて、スイスに行きます。そこで、彼女は結局1年間という期限を決めて娼婦として働くことを選びます。

 彼女は若く、思慮深く、決断力があり、出身地や職業を別にしても、私とは何の共通点もないように見えます。でも、彼女の日記には共感する部分がとても多いのです。特に何かを選択するときのプロセスに、「そうそう」と頷いてしまいます。そのほか、マリーアの愛に対する考え、セックスに対する観察については、部分的に共感したり、自分の経験の中からは思いもしない視点に驚かされたりします。タイトルの11分間は、マリーアが考えるセックスの割合。服を脱いだり着たり、他愛のない話の時間を除けば、たった11分間。1日の中のたった11分間を占めるセックスがどういう意味を持つのか、マリーアの考えに唸ってしまうことも。正しい答えなんてもちろんないのですが、自分の中から何かしら答えを見つけたいのです。

 最後は、私にとってちょっと意外な結末で終わりますが、読んでいる間、マリーアとともに私の気持ちも揺れ、経験したことのない世界を少し冒険することができます。

 だから、小説の世界の旅は、私の楽しみなのです。
posted by 作楽 at 21:21| Comment(0) | TrackBack(2) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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11分間
Excerpt: パウロ・コエーリョ大好きなんだけど 今回はちょっと困った。 苦手な分野だ>< とういうか、まぁ、最近読む本は 偶然にもこんな感じだ! 愛だとか娼婦だとか不倫だとか恋愛..
Weblog: 丑日記
Tracked: 2006-08-05 14:42


Excerpt: 1947年8月24日- )は、ブラジルの作詞家で小説家。ブラジルのリオ・デ・ジャネイロに生まれる。大学の法学部に進学するも、1970年、突然学業を放棄して、旅に出る。メキシコ、ペルー、ボリビア、チリ..
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