2006年08月01日

「古本道場」

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角田 光代、岡崎 武志 著
ポプラ社 出版

 関西から東京に引越してきて、今までより不便になったと感じることも稀にありますし、物価の高さに辟易することもあります。その一方で、東京って楽しい、と思うこともたくさんあります。その中でもノンフィクションの本を今まで以上に楽しめるようになったことがあげられます。

 もちろん、大阪にもそれなりに大きな本屋は多数ありますし、10年前と違って、オンライン書店があるので、東京と大阪で手に入る本が大きく違うとは思いません。何が違うかと言えば、本を読んでそこに簡単に行ってみることができるケースが多いのです。たとえば、「かみさま」を読んで、その中で紹介されている美篶堂やpress sixに実際に行ってみることができるのです。

 本で紹介されているから、大きなお店を想像して足を踏み入れてみたら、「こんなに小さいんだ」と自分で「感じる」ことができるのです。

 そんな風に楽しめる本にまた出会いました。「古本道場」です。世界に誇る古書街である神保町に毎週でも行ける距離にいるのだから本好きとしては存分に楽しまねば、と思いながら、なかなかそこまでには至りません。とりあえず、「神田神保町古書街―エリア別完全ガイド」で、どこのお店にどんな本があるのかがわかり、ある程度買い物もしてみたのですが、どうもしっくりきません。

 角田光代さんは私ほどレベルは低くないのですが、やっぱり神保町を歩くと「よそ者感」を覚えてしまっていたそうです。そんな角田さんが古本に精通している岡崎武志さんという師匠を得て、古本を極めていくというのがこの「古本道場」の構成です。そして、個性豊かな古本屋、惹かれる古本たちに出会い、あの巨大な神保町に居てもよそよそしい感じを受けなくなっていくのです。

 本の中では、岡崎師匠から角田さんに指令がくだされます。その指令を角田さんが遂行した経過を角田さん自身が書かれる章があり、その成果を評価しコメントする岡崎師匠の章が続きます。もちろん岡崎師匠の章の最後には次の指令が書かれていて次へと続く、という交互の構成になっています。全部で指令は8種類。

 もちろん神保町だけではありません。こんなところに古本屋があるんだと驚く土地も出てきて、それぞれの個性を放っています。そして、探す本も子供の頃に出合ったなつかしい本だったり、古本屋がある土地を出身地とする文士の本だったり、バリエーション豊かです。

 そして何よりも、ひとつひとつの課題をこなす中で角田さんの見せる古本屋や古本に対する観察がとてもいいのです。

 「棚におさめられた本は、みな一度はだれかに読まれ、そのだれかを作り上げるちいさな細胞のひとつになり、そしてここにきました、という感じ。」と角田さんは古本のことを見ています。

 なんとなく私が本を好きな理由もそのあたりにありそうです。空っぽの私を少しずつ埋めて、作り上げてくれる本。そして、一度はその役目を終えた古本が新たな出発を迎える場所、古本屋。

 私の古本屋と古本探しは、まだスタート地点です。
posted by 作楽 at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(本) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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