2011年10月19日

「数学的にありえない」

20111019「数学的にありえない」.jpg

アダム・ファウアー (Adam Fawer) 著
矢口 誠 訳
文藝春秋 出版

 いわゆるページ・ターナーです。児玉 清氏による解説では、「ダ・ヴィンチ・コード」が引き合いに出されていましたが、納得できます。ひとつは、確率論やら量子物理学やら、門外漢なら初めて接するような薀蓄が散りばめられていて、知らなかったことを知るという楽しみを満喫できる点が似ています。もうひとつは、多彩な登場人物がひと通り出揃ったあとは、めまぐるしい展開に惹きこまれる点です。

 ただ「ダ・ヴィンチ・コード」のほうが、わたしにとっては現実味がありました。そうはいっても、今作品にリアリティがないわけではありません。なにしろ、科学的にまだまだ未知の分野である脳内のことなので、想像がおおいに働いて、展開に白けてしまうということはありませんでした。解説では、そのあたりを「眠っていた知的好奇心が猛然と刺激され」たと記されています。たぶん、わたしのように自分が経験した範囲内でしか考えられない人間と違って、理論を構築するのが得意な方々にとっては、探究心が広がりやすい分野なのでしょう。

 わたしが「ダ・ヴィンチ・コード」よりも気に入った点は、登場人物がみな優等生タイプではない点です。ギャンブル依存症や統合失調症などの問題を抱え自分自身をあまり信頼できない状況にあっても兄弟を助けようとする双子や、組織に対する背任行為を繰り返しながらも自分なりの価値観を貫こうとするCIA局員や、男に利用されているだけと薄々感じながらも相手を信じようとする女子学生など、それぞれが卓越した何かを持ちながらも不器用さゆえに思わぬ道を歩んでしまったところに、生身の人間を感ました。

 この著者にとってはこれがデビュー作で、次の作品もすでに刊行されているそうです。
posted by 作楽 at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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