2006年09月06日

「取り替え子(チェンジリング)」

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大江 健三郎 著
講談社 出版

 人間も動物の一種である限り、その種の存続のために生きるということは避けられないのだと「サルが食いかけでエサを捨てる理由」を読んであらためて思いました。著者は言います。牛や豚は家畜になることによって、つまり、人間の食になることによって、その種が存続できた。個体に関して言えば、寿命が尽きるより前にすべて死んでしまったとしても、種が残るということはいいことなのである。

 普段、自分たち人間を、種の存続という観点から見ていない私にとって、衝撃のある言葉でした。結局、個々の権利だとか義務だとか生きがいだとか言っていても、「生きる」ということは、種を残すということなのかも、と普段考えないようなことに行き着き、子孫を残すという点において何ら貢献していない私は、少し重い気分になりました。

 やはり、人は人としての歴史を繋げながら、人全体として生き継ぐことが大切なのかもしれないと、この「取り替え子(チェンジリング)」を読んだときも強く思いました。でも、不思議なことに、感じたのはそれだけではありませんでした。

 自分がしたいことに向き合い、自分が一生で何ができ、何を残せるのかを探し、個としての自分の命をまっとうすることも大切だと感じたのです。そして、その上で、自分の身近な人と刺激しあったり、助けたり、助けられたり、関わり合いを持ちながら、人のかたまりとして生き継いでいくことが大切だと思います。たまたま、その人のかたまりが大きくなって人類になるのではないかと。

 この本のタイトルにある「取り替え子」がどう関わってくるのか、ずっと気になりながら展開を追っていました。そして、最後になってやっとその取り替え子が意外な形で現われました。その時点から、なぜか女性からの視点が強く意識されます。ぜひ、女性にも読んでいただきたい本だと思います。
posted by 作楽 at 01:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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