2011年12月06日

「星を継ぐもの」

20111206「星を継ぐもの」.jpg

ジェイムズ・P・ホーガン (James P. Hogan) 著
池 央耿 訳
東京創元社 出版

 SFとしては有名な古典「月は無慈悲な夜の女王」で思いのほか苦戦したので、近い年代のこの作品を読もうか迷ったのですが、読んで大正解でした。

 1977年発表の作品なので、すでに30年以上経っているのですが、特に古さを感じることはありません。(訳は新しくなっていないので、その古さを感じるのは仕方がありません。)

 理由としては、先端技術に関する詳細な記述が少ない点にあると思います。ある事実を解明するために使った技術を細かく説明せず、判明した結果に重きをおいているのです。そして解明した事実をもとに、科学者たちが多種多様な推論を戦わせ、ひとつの結論に集約させていこうとするプロセスが熱気を帯びていて、読んでいるほうも盛りあがります。たとえば、推論Aに見られる矛盾は、推論Bでは見られません。逆に推論Bで見られる矛盾が、推論Aになかったりして、どの推論も完璧ではないのです。切り口をどう変えて仮定を立てれば理論の破綻がないかを模索するとき、それぞれの登場人物の個性が浮き彫りになって、科学以外の読みどころもあります。

 議論の発端は、月で発見された死体が5万年前のものでありながら、現代の人類とまったく同じ特徴を備えていたことです。現代の人類と比べたときの僅かな差異を手掛かりに、宇宙の形成過程を想像しながら、5万年前のその生命体の由来を突きとめようと科学者たちはそれぞれ自論を展開します。その過程で、新たな発見があったり、ちょっとした思いつきから一挙に事実解明が進んだり、さまざまな山や谷があります。最後まで一気に読ませる勢いがありました。
posted by 作楽 at 00:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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