2012年02月03日

「羊をめぐる冒険」

20120203「羊をめぐる冒険」.jpg

村上 春樹 著
講談社 出版

1973年のピンボール」の続編にも思える作品です。”続編にも”と変な表現になってしまうのは、「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」とは少しテイストが違っているからです。ジャンルとしてファンタジーだとは言いきれないけれどその要素も感じられる「1Q84」のような感じです。でも、登場人物は鼠と僕が中心になっていて、「1973年のピンボール」のその後の時代、僕の20代最後の時期が描かれています。

 ある日突然二進も三進もいかなくなってしまうところは、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」に似ています。「やれやれ」というセリフがぴったりと、はまっていました。突如陥ってしまった窮地に対して、怒りより諦め、抵抗より受容を感じ、「やれやれ」がぴったりときた気がします。

1973年のピンボール」で鼠がひとが腐っていくことについて語っていましたが、腐っていく、ひとという存在は、それに抗うことができるのかな、と読んでいて思いました。鼠が、腐っていく自分を人前に晒したくなかったと語る場面があったからです。腐っていく自分を晒したくないと語った鼠は、その価値観にふさわしい結末を用意していました。

 僕が相棒と経営する小さな会社の仕事の描写などはつまらないほど現実的でありながら、一方でファンタジーのような冒険が存在していて、ミスマッチなのですが、登場人物の価値観とその行動が妙にマッチしていて、思ったほどの違和感を感じなかったのが、不思議でした。
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