2012年03月01日

「カンガルー日和」

20120301「カンガルー日和」.jpg

村上 春樹 著
講談社 出版

 23の短篇が収められているのですが、特に印象に残ったのは、次でした。

−4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて
−駄目になった王国
−図書館奇譚

「4月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」は、読者に強烈な印象というかインスピレーションというかを残すらしく、自主製作なんかの映画の原作として採用したいという申し入れがとても多く、ある一定数を超えてからは断っているという内容のインタビューを読んだことがあります。読んでみると、なるほど、と納得できました。寓話のようにも読めるし、ユーモアもあるし、何よりこの物語と対話できそうな内容なので、この作品について掘り下げて考えたくなる人たちの気持ちはわかります。

「駄目になった王国」は不思議な構成の話です。タイトル通り、駄目になった王国の話題で始まるのですが、実際はQ氏というかつての友人の話なのです。そして、最後にどうしてそんなタイトルをつけたのかという言い訳がおまけとしてついてきます。読み終わったあと、”その王国はどんな王国だったのか”気になって仕方がありませんでした。

「図書館奇譚」には、羊男が登場します。「羊をめぐる冒険」にも「ダンス・ダンス・ダンス」にも登場したあの羊男です。このときから、自分のことを「おいら」と言っています。”またお会いしましたね”と声と掛けたくなるようなキャラクターです。弱気で無害なところも変わっていませんでした。

この記事へのコメント
毎回楽しく拝読しています。
また村上作品へのコメントです。
高2の息子が使っている教科書に「カンガルー日和」が「城の崎にて」とセットで載っており、面白い対比でした。
人生は「些細であるが、かけがえのない日常の記憶の集合」であることを改めて感じました。
その教科書には「題名の意味するところを考えてみよう」という読後の課題がありましたが、男子校理系クラスの息子たちにはきっと難題でしょう。
この作品が世に出た頃、息子と同じような年齢、状況にあった当時の私にも、同じように難題であったに違いありませんが。
Posted by a_oze at 2012年06月13日 23:06
続きですが、氏による編・訳のアンソロジー「バースディ・ストーリーズ」のなかの書き下ろし作品「バースディ・ガール」も数年前、中学国語教科書のなかに採用されていました。
こちらも文章は平易ですが、テーマは難解だと思います。
主人公の女性が二十歳の誕生日に、不思議な老紳士の前で願ったのはいったいどんなことだったんでしょうか?
Posted by a_oze at 2012年06月14日 23:39
a_oze さん

 コメントいただき、ありがとうございます。
 わたしは、つい最近職場の同僚となった村上ファンの影響で、村上作品を読み始めたところで、実のところ、彼の翻訳作品はいくらも読んでいません。「バースディ・ストーリーズ」もいままで知りませんでした。ぜひ読んでみたいと思います。

 a_oze さんのおっしゃる、「些細であるが、かけがえのない日常の記憶の集合」には同感です。「カンガルー日和」のなかにだって、ちょっとした諦めみたいな雰囲気はありつつも、そういうものも含めて、自分にとってのいい時間なのだと思います。
Posted by 作楽 at 2012年06月15日 07:49
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。
Posted by 株式入門 at 2013年03月07日 20:05
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